二次創作『銀魂』長編

□異名狩―漆―
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 山崎は言いにくそうにその先の言葉を濁した。銀時と沖田は黙って聞いている。暫くして山崎は意を決して再び口を開いた。


「・・・俺、実は小さい頃攘夷戦争で出てた事があるんです。一応成り行きで攘夷側についてました。でも、思想があったわけじゃないし、天人を倒したかったわけでもなくて・・・自覚はないんですが、俺は結構特殊な一族の出らしくて、訓練とかしなくても気配を消すのが得意なんです。山に祖父母と狩猟や採集で暮らしてましたから、クナイなんかも使い慣れてて・・・戦争に出るきっかけは、祖父母だったんです。祖父母も気配を消すのが上手くて、幕府側に密偵として働きに活かされた。祖父母は俺に言いました。すぐ戻ってくるって。でも、どれだけ待っても戻ってこないから、戦場まで探しにいったんです。たまたまその時近くにいたのが攘夷側の軍だったんで、其処に身を寄せて情報を探りました。でも祖父母の情報は中々手に入らなくて、寧ろ他の情報の方が手に入りやすかったんです。それで、祖父母の情報収集のついでと身を寄せさせてくれてる攘夷軍へのお礼もかねて、俺自身、密偵をするように成しました。・・・そして、暫くそうしているうちに、祖父母は死んだのだと分かりました。その時、俺はもう自分に変える場所なんてないんだなって思って、今いる攘夷軍だけが自分の居場所なんだって思って・・・それから、密偵と兼ねて暗殺も請け負うようになったんです。如何にも地味な俺にはそれが向いていたみたいで、何時しか俺には異名がついていました。それが『闇烏』です。いつも黒い服を着てたし、子供で小柄だったんでそういう風になったんでしょうけど。元々思想なんてあったもんじゃなかったんで、戦争が終わったら俺の仕事も終わりました。でも、生きる気力もなくて・・・一日中木の上から戦場跡を眺めるだけの生活で。衰弱して、木から落ちた所に、丁度武州から上京しに来ていた局長達が通って、副長に拾われたんです。その時俺は、この人の為に尽くす事になるんだろうなって確信しました。以来、副長達の事は信頼していますし、ずっと尽くして来たつもりです。でも、役職の関係もあるんでしょうけど、どうしても自分の過去については言えなかったんです。それが、突然あんな男に昔の名前で呼ばれて、どうしようもなく、今を失うのが怖くなって・・・絶対に、副長達に知られる前にアイツを倒さなきゃって思ってたんですけど。」
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