水中の廃人

□思わず出た微笑み
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あの後、ドレスを購入した。
外に出た三人は、軽く伸びをすると、プロシュートの行くか。という掛け声で、スイッチが入ったように移動を始めた。

「何処か行ってみるか?」
「いや、どっちでも」
「あそこのパニーニでも食うか?」
「それでいい」
そう言ったイルーゾォが指差したワゴンに三人は、向かう。
そこのワゴンには、パニーニというサンドイッチのようなイタリアでの軽食が売ってあった。

「はい。三つで12000リラね」
「はい。12000リラ」
イルーゾォは、三つ12000リラという他店に比べて、少し安めのパニーニを買うと、プロシュートと名無しさんに手渡した。
そのパニーニは、ハムとチーズというとてもシンプルな物だった。
「パニーニが一つ4000リラって、少し安いな」
「普通なら5300リラくらいなのにね」
「それで、美味しい」
作り置きの上、値段も安く三人とも味には、全く期待していなかったもののなかなかの味の良さにそれぞれ満足した。

三人とも食べ終えると、一斉にアジトへの帰り道を歩き出した。
入ったのは、古ぼけた路地裏で、いかにも蜘蛛の巣やら虫の死骸やらで、溢れかえっていそうな雰囲気だった。
それでもやはり、三人ともギャングの端くれのため、これっぽっちでは、ピクリともせず、普通に歩いてゆく。

路地裏を抜けると、海が広がる。
港に着いたのだった。
三人がついたのは、予定より少し早い夜の六時四十五分ほどだったのだが、既に豪華客船は港に到着していた。
客船には、既に人が乗り込める状態だったようで、どんどんと人が乗ってゆく。
三人も急いで、着替えて、メローネとの集合場所へ行った。

「おい、メローネ」
「あぁ、みんな。もう大丈……夫」
メローネも、名無しさんの姿を見て、言葉を失った。
「あぁ、似合ってるね」
「それより、母体は?」
「それがさぁ、ターゲットの血液はなんとか入手したんだけど、母体を探す時間がなくて、客船内でいいかな?」
「別に構わない」
名無しさんは、プロシュートのそれよりという一言に若干イラつきつつ、客船の方を見た。

「なんか、出発しそうだから早く!」
「あっ、あぁ!」

「乗船の前に、チケットを拝見」
「あぁ、はい。」
「グラツィエ、どうぞ乗船下さい」
一通りの手続きを済ませ、遂に四人は、豪華客船に潜入した。
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