水中の廃人

□触れることは出来ない。
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「私は、自由を求めているけど、それと同時に、居場所も求めている」
それを言った瞬間、奥から申し訳なさそうにイルーゾォが出てくる。そして、謝罪し始めた。
「ごめん、リーダー。ちゃんと見てたけど、どうしても言うことがあるって」
どうやらイルーゾォは、名無しさんを監視していたようで、彼女が話を聞いていたのは、自分の所為だと言う。
「いや。構わない。むしろ、好都合だった」
その言葉に、名無しさんは目を光らせた。そして、首を横に力強く振った。どうやら否定をしているようだった。

「私は、此処にいたい」
「だが、しかし」
リゾットは、名無しさんの言葉に躊躇い(ためらい)を見せる。リゾットは、先ほどのプロシュートの言葉で、気がついた。
この少女に人殺しは、早すぎると。まだ、人生を謳歌(おうか)する年頃なのだと。

「いいんじゃあないか。さっきまで、やめとけって言ってた俺が言うと説得力ねぇけど、いたいならいればいい」
プロシュートは、先ほど言った言葉を省みる様子も無く、言ってのけた。確かにそれは、正論であった。

「私は、誰も触れることはできなかったし、誰も触れてくれなかった。スタンドの所為で、でもスタンドが無くなればいいのに、とは思わなかった。何故なら、スタンドがあるからこそ、分かり合えることもあるんじゃあないかって思ってたから」
名無しさんは、そう言い切るとリゾットとプロシュート、イルーゾォを見て、ゆっくりお辞儀をする。そして、静かな口調で、よろしくお願いします。と言った。

リゾットたち三人は、ゆっくり頷いた。
「残りの奴らにも伝えなくちゃあな」
「俺が残りを呼んでくるよ」
プロシュートとイルーゾォが言うと、リゾットは頼むと言って、名無しさんに向き直った。
「よろしく頼む」
「えぇ」
名無しさんは、出された手をそっと受け取った。
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