水中の廃人

□鏡の中で動き出す運命
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「お前。名前は?」
イルーゾォがそう、彼女に尋ねた。彼女は、一瞬戸惑ったが、その問いかけに答えねばならない義務のようなものを感じたのか、名無しさんと、答える。イルーゾォは、そうか、と言うと前に向き直る。イルーゾォは、依然真顔で、自らの前を行くリゾットをジッと見ていた。
「なぁ」
「なんだ。彼女の事情以外で頼む」
「なら、いい」
それが、リゾットなりの気遣いだったのか、ただ、裏事情があったのかは、不明だったが、どうやらイルーゾォは、それ以上の詮索は諦めたようだった。名無しさんは、ただその他愛もない会話をずっと聴きながら、無心に歩く。
「スタンドはなんだ?」
リゾットは、名無しさんに問う。
「言えません」
「何故」
「言うなと言われています。いずれ分かることなので」
「上からの命令か」
リゾットは、雇うという形で、彼女をチームに引き入れたため、それ以上のことを聞くことは、不可だったのだ。だが、彼女の言うとうりであり、共に任務をしていれば、いずれ分かってしまうことだった。ただ、リゾットもイルーゾォも気になることに変わりはなかった。

「ここは、不思議なところですね」
「そうか」
「心が落ち着くような気がする」
「そんなことは、初めて言われた」
イルーゾォは、名無しさんの質問に彼女の方も向かず淡々と答えた。確かにイルーゾォは、自身のスタンドについて、そのようなことは、初めて言われたのだが、不思議なことに、今は気にならなかったのだ。
「他に、どのような方がいるのですか」
「俺たちを除いて、あと、五人だ」
五人、そう暗殺チームは、常に人数が少なく、多数の任務を遂行するのは、困難にあったのだ。おまけに、給料の少なさから雇うことも困難にあった。だが、今回は、資金に余裕があったのだ。
「そう、意外に少ないのね」
「そこについては、触れないでもらいたい」
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