短編集

□喋れるわけないだろう。
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「なにやってるの、ソルベとジェラート」
「んー?あぁ自習?」
「……わからねぇ」

なんとまぁ真面目だ。
この二人が普通に学生をしていたら、きっと優等生だろうな。まぁそんな年齢ではないが。

うんうんと唸っているソルベの横で、ジェラートが丁寧に教えている。が、それも虚しくまったく頭に入っていないようだった。
ソルベは、今日一番酷かった。なんせ、結局最後まであ行を言えていなかった。
そして、意外に凹み易い性格なのかして、常に凹んでいた。強面の暗殺者が台無しだ。
それに対して、ジェラートは、結構喋れていた。発音を平たくするのも上手かった。

そして、ふっとソルベの方を見ると、これまた盛大に凹んでいる。
ベランダだというのも忘れているのか、がっつりと。
ジェラートが必死に慰めているがソルベには、届いていないようだった。

「私はもう行くね……」
「あーっと、その前に『好き』だよ名無しさん」
「また……」
「俺も、『す……き』」

またもやこっぱずかしくなった。ペッシに引き続きまたもや、まさかのソルベとジェラートだ。
この二人まで、こんなことを言い出すとは思わなかった。
少しずつ顔が赤くなっていくのがわかる。ジェラートは、ニコニコしていて、ソルベは苦笑いを浮かべていた。

「チャオ!」
私は、逃げるように立ち去った。

「ホルマジオの兄さん、みんなが虐めてきます」
「しょーがねーなぁ……言いそびれてたが、俺も『好きだぜ』名無しさんちゃん」
「はぁ?」

思わず声を上げて、驚いてしまった。こいつは、私の話を聞いていたのか?
私は、確かに虐めてきますと訴えたのだが、ホルマジオにまで、虐められた。
当の本人は、嫌なくらいニコニコしながら、しょーがねーなぁなどと口癖を言っている。

「馬鹿」
「おいおい、そりゃあねーぜ」
「じゃあ、分からず屋」

もうホルマジオ兄さんと言うのも、やめてやる。
今日は、もう耳の体力が限界だ。
べーっと舌を出して、ホルマジオの部屋から退散した。

疲れたと言いながら、部屋に戻った。すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。
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