短編集

□喋れるわけないだろう。
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私は、驚愕した。まさかここまで飲み込みに差があるとは、教え始めて、二時間経ったのだが、メローネやイルーゾォ、ギアッチョは、思ったより話せている。
だが、ソルベは今だあ行すらもまともに話せていない。あれには、心底驚かされる。

「んあー、こんな感じですか?日本語とは、難しいですね、メローネ」
「そうですね、ギアッチョ」
「俺も十分に話せない」

話せている三人は、やはりがっつり敬語になっていた。
だが、ギアッチョに至っては、こちらの方がいつもより平和でいいかもしれない。

「なぁー名無しさん、好きってどう言うんだ?」

メローネが何時ものイタリア語に戻り、いきなりそういうことを言い出したため、少し驚いた。
メローネなら言いかねないとは思っていたものの、まさかこんなに早く聞いてくるとは思わなかった。

「んと、『好き』って言うんだよ」
「へぇ、『好き』ね」

やはり、自分に向けてではなくとも母国語で好きなどと言われると少し、どきっとする。
おまけにメローネは、顔が整っていて綺麗だ。
どきどきしていると、不意に後ろから再び、好きと別の声がした。透き通った感じを帯びていて、なおかつ色気が混じった声だ。

プロシュートだった。
私の肩を抱いて、耳元でふっと呟かれた。

「んー?どうした名無しさん、顔が真っ赤だぜ?」
「そんなことないですっ!」
「ちぇ、俺は?『好きだよ』」
「私で遊ぶな!」

やばい、金髪どもに囲まれた。しかも、私的に一番厄介な二人だ。
プロシュートは、元々女性の扱いに慣れているし、メローネは、女性が苦手で私だけが平気だから余計に扱いにくいのだ。

右耳も左耳も甘く、溶けそうになる、それと同時に私の顔中真っ赤になるのも分かった。
時折吹きかけられる息に鳥肌がたつ。

「もう、やめてって」
「ごめんごめん」

「今日は、もう終わり」

私が声をかけると、みんながバラバラと動き始めた。
私が立ち上がると同時にペッシが紅茶がいるかどうか、聞いてきたのでお願いした。

凄く、疲れた。特に最後のメローネとプロシュートが。
何も耳元でふざけて言わなくていいじゃあないか、まったく酷い話だ。
お陰様でこっちは、どうにかなりそうだった。心臓が高鳴り、耳も溶けそうになった。
そう、ブツブツ言っているとペッシが紅茶を持ってきてくれた。

「日本語楽しかったですぜ、グラツィエ」
「それはよかった。うん」
「『好き』ですよ、名無しさんのこと」
「は?」

まさか、ペッシにまで言われるとは思わなかった。
目が点になっているこもしれない
とりあえず、グラツィエとだけ言って、リビングを去った。
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