短編集

□言うなり
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急いで、昨日の場所に来た名無しさんは、グラハムを探す。とはいっても、昨日の時間は、少しばかり過ぎていて、いるかどうか定かではない。
まず、根本的に会う約束すらしていないのだから、いなくても不思議ではないのだ。
グラハムは、強い人だったから、きっともうリハビリは、終わったに違いないと、名無しさんは思った。
それに、見た目だけで判断していた年齢も当たっているかは、分からなかったのだ。

名無しさんは、ふらふらとするうちに疲れたようで、珍しく久し振りに喫茶店へ立ち寄った。
彼女は、カプチーノを注文するとゆっくりと溜め息をついた。よほど疲れた様子であった。

名無しさんが頼んだカプチーノが到着したころには、既に疲労は取れていた。喫茶店では、よくあることなのだ。頼んだものがきた頃には、既に疲労は取れているということは。
名無しさんは、喉を鳴らしながら、カプチーノを流し込んだ。喉が脈打つように揺れている。
全て飲み終える頃には、もう昨日の時間を二時間以上も過ぎてしまっていた。
名無しさんは、残念に思ったがこればかりは仕方がなかった。とぼとぼと帰り道を歩き出した。

名無しさんは、家への帰宅に近道をしようと、路地裏へ入ってゆく。その時、グラハムはちゃんと見ていたのだった。彼女が路地裏へ入ってゆく姿を。
「名無しさんさん?」

【その姿は、君にしか見えないようで】
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