水中の廃人

□罪悪感の時に
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メローネが頭を冷やしに行って、数分経った頃だった。
三人で食事を取りつつ、暗殺対象の行動パターンを収集している。といっても、今日は初日のため、暗殺対象は、乗客全員に挨拶をして回っているだけで、特に目立った行動はしていなかった。
つまり、本番は今日の夜中、乗客が寝静まる頃なのだ。

「動きがないね」
「ったりめーだ。まだ初日だろ?
だから、対象は挨拶をして回ってんだ」
「名無しさんは、初めてだからわからないと思うけど、あーゆーお偉いさんが乗客全員に御託を並べていくんだぜ? 」
名無しさんは、プロシュートとイルーゾォの言葉に黙って頷いた。
そして、名無しさんは軽く息を漏らすと近くのテーブルにもたれかかった。

それから、暫くして例のお偉いさんが三人に近づいた。
「こんにちは、本日は私の船へようこそいらっしゃいました」
「いえいえ、こちらこそこんな立派な客船へ乗船させていただき、光栄ですよ」
客船の持ち主の挨拶に手慣れた様子で、プロシュートは作り笑顔のままで、スラスラと返事をする。
そこには、あんまりの変わりように唖然とする名無しさんと、お偉いさんを軽く睨むイルーゾォがいた。

メローネは、一つため息を吐くと、テラスの手すりに寄り掛かった。
そして、頭を軽く掻き毟る。その時にメローネは一つのことに気がついた。
自身の目の前を通った青年の周りがやけに凍える雰囲気だったからだ。もしかするとスタンド使いかもしれない。メローネは、そうは思ったものの下手に手を出したり、近づいたりすると、ミスを犯しかねないとも思ったため、その青年を目で追うだけにする。

風貌は、普通の今時の青年だったが、メローネには突っかかることがあった。
それが、雰囲気やオーラといった目に見えない類のものだったのだ。
メローネは、目を伏せつつも青年を垣間見るが特に変わった行動は無かった。
スタンド使いである確率は、わずかながらある。だが、追求は身を滅ぼすかな。とメローネは、独り言をつぶやくと、テラスから中へ入ろうとする。

「メローネ!」
「おう、三人とも。
さっきは、すまなかったな」
「いえ、こちらこそすいません」
メローネは、それより、と話を切り出す。

「スタンド使いの疑いがある青年がいた。
根拠は、はっきりは無いがオーラが只者じゃあなかった」
「まぁ、根拠がなければ深くは、追求できないからな。仕方が無い、様子見だなプロシュート」
「あぁ、そうだな」
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