水中の廃人

□思わず出た微笑み
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「よし、んじゃあドレスでも見に行くか」
「そういえば、プロシュート。正装代は、組織から落ちるのか?」
「知るかよ。豪華客船代は落ちるって聞いたけどよ」
と、プロシュートとイルーゾォは、名無しさんをよそに資金について話し始める。
名無しさんは、気にされていないことは、どうでもいい様子で、やっぱりお金は無いんだな。と、考える。

プロシュートとイルーゾォが資金について話し始めて、十分ほど経った。
二人は、名無しさんに向き直り、プロシュートの方の口が開く。
「じゃあ行くか」
「資金は大丈夫なの?」
「あぁ、組織から落ちるという結論に着いた」
プロシュートは、とてつもなく無責任な言葉を悪びれた様子もなく、名無しさんに言い切った。
名無しさんは、ため息を大きく一つ吐きながら、先に行くプロシュートとイルーゾォの後ろを追って、歩き出した。

「着いたぜ」
あれから、数分経ってからだった。恐らく、暗殺チームのアジトの最寄りの店に着いた。
相変わらず、何故か上機嫌なプロシュートを見て、イルーゾォと名無しさんは、深くため息を吐いている。
イルーゾォは、それ以上ため息を吐くと、魂ごと出て行くのではないかというほどであった。
当のプロシュートはというと、遂に、ドレスを見立て始めている。

「これなんてどうだ?」
「え?私は、あんまりドレスとか正装だとかわからないから、任せるよ」
「プロシュート。あまり派手なものは避けろよ」
「わかってらぁ」
そう言うとプロシュートは、手元の赤いドレスを端の方に寄せて、遠くの淡い紫のドレスを自らの手元に寄せて、名無しさんにこれは?と見せる。
名無しさんは、少し顔をほころばせつつ、イルーゾォを手招きしつつプロシュートの元へ行く。
笑わなかった名無しさんが時折、顔をほころばせているのを見たイルーゾォは少し、安心した表情を浮かべて、名無しさんの後ろについた。

「決まったのか?」
「あぁ、名無しさんが選んだんだぜ?あれだ」
と、プロシュートが指差した方向を見たイルーゾォは、言葉を失った。あまりにも綺麗だったのだ。
「よく似合ってる」
「だろ?ん、馬子にも衣装か?」
などと言うプロシュートに名無しさんは、何故か謝る。
「違うぜ、イタリアンジョークだって」
「なんだよお前。イタリアンジョークって」
「いや、本当に似合ってるから」
と言うプロシュートに名無しさんは、呆れた様子で、そうですか。と言った。
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