水中の廃人

□触れることは出来ない。
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「プロシュートか、帰ってたのか」
「おう。リゾットか」
プロシュートと言われた男は、静かに煙草をふかしている際中だった。
煙草から溢れる煙は、ゆるりと、天井に突き当たると部屋中に充満した。
「馬鹿と煙は高いところを好むってな」
「何が言いたい」
「そのうち分かることさ」
そんな他愛もない会話を繰り返しつつ、プロシュートはリゾットに名無しさんのことについて聞く。
どうやらプロシュートは納得いかないようで、ついにはリゾットに向かって、怒鳴りだした。

「お前なぁ。あのシニョリーナを、いやあれは、バンビーナだ。あいつをどういう任務に向かわせるんだ」
「普通に、俺たちと同等の任務に行ってもらう」
先ほどまで怒っていたプロシュートも、リゾットの言葉に呆れかえり、一つため息をついた。そしてまた、煙草をふかし始める。

「馬鹿か、お前は」
「あぁ、馬鹿だ。だから高いところを好む」
プロシュートが言った言葉にリゾットが肯定した。そして、リゾットはハッとした。先ほど言っていたプロシュートの言葉の意味が理解できたのだった。
「あぁ、馬鹿だ。だから高い評価をもらおうと、高い地位を狙ってしまう。あの子を自由にしてやろう」
リゾットは、一人で納得すると、うんうんと頷きドアに向かう。プロシュートも、一つ頷く。それでいいと言うかのように。

その時だった。バンとドアが勢い良く開いたかと思うと、名無しさんがその先に佇んでいた。
「聞こえていたのなら丁度いい。自由になりたいだろう?」
「いいえ。私は」
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