水中の廃人

□表裏一体と私
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「ここが、アジトの前だ」
イルーゾォが、言うと名無しさんは軽くお辞儀をして、鏡から出て行こうとする。すると、リゾットがすぐさまそれを制止した。名無しさんは、一体何なんだ。という目でリゾットを見ると、リゾットは軽く首を横に振った。それは、駄目だということを意味しており、さすがの名無しさんも雇われということで大人しくする。
「イルーゾォ」
「あぁ」
リゾットとイルーゾォは、軽くアイコンタクトすると、イルーゾォは、手品のようにアジトの中へ入っていく、リゾットは名無しさんの手を引きつつ、その後に続いた。

「ここならば、大丈夫だ」
「そうか、助かった。イルーゾォ、ゆっくり休め、リビングを使ってくれて、構わん」
「あぁ、そうさせてもらうよ」

名無しさんは、なんだなんだとリゾットを見る。リゾットは、それを軽くあしらうかのようにふいと顔を背け、何かをはぐらかすようにする。
「なんなの」
「いや。俺は、お前をまだ信用ならんからな」
「よく言われる。まぁ怪しい組織だったし仕方ない」
名無しさんは、組織にいたのは、もう数十年も前かのようにあっけらかんとした面持ちで言った。リゾットは、その反応に少しばかりびっくりして、名無しさんに問いた。
「何故、そんなにあっけらかんとしていられるんだ」
リゾットのその質問に名無しさんは少し苦い表情を浮かべると、小さく口を開く。
「早く、あの組織から抜けたかった。まぁ、抜けた先でも信用してもらってないけどね」
そんなことは、どうでもいいと言うかのように首を横に振る名無しさん。

「今日は、部屋を貸すから、休め」
「分かった」

表裏一体な彼女の現実味が全くない生活が、再び始まった時。

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