短編集

□先の先まで
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静まり返る暗殺チームのアジトにイルーゾォだけが任務もなく、かといってすることもなくソファーで、だらけていた。
その髪は珍しく下ろされていて、いつものお下げのかたの所為で、前にも少し垂れている。
重力に逆らうことの知らないイルーゾォの髪は、お下げの時には出ていない色気が漂っていて、黒髪のストレートは、こんなに色気の出るものなのかと、思われる程だった。

そんな中で、イルーゾォは髪を鬱陶しそうに耳にかけていて、それでも首元を通り過ぎて、イルーゾォの視界に入るようだった。
そのうち面倒臭くなったのか、読書にふけり出した。

「ただいま」
「おーおかえり。どうだったよ」
「んー仕留めたよ」
「流石」
当たり前じゃんと言うチームの紅一点がイルーゾォの元までゆっくりと歩いていく。
すると、イルーゾォを見るなりきゃーと黄色い声を浴びせかけたのだ。

「イルーゾォが髪を下ろしてる!」
「んだよ……悪いか」
「全然、色っぽい」
「色っぽいってなぁ、お前」

お前と乱暴に言われたのも気にせずに、彼女はイルーゾォの髪を一束掴んで、無造作に指を通した。
サラサラと砂のように零れ落ちる黒髪が彼女の指を抜けて落ちていく、相変わらず黄色い声をかける後ろの人物にイルーゾォは、どこか嬉しそうにため息をついた。

「イルーゾォ惚れちゃうかも、色っぽい」
「はいはい。そればっかだな」
「本当に惚れるよ?」
「ん」

興味なさげに返事を返すイルーゾォに腹が立ったのか、彼女はイルーゾォの髪を丁寧に掴み取って、そっと口付けた。
それでは物足りなかったのか、首に手を回して、もう一度髪に口付ける。

「何やってんだよ」
「キス」
「それは分かってるよ」
「髪に口付ける意味を調べて出直してこい!」
「はぁ?」

イルーゾォは、言われるがままに携帯を取り出し髪に口付ける意味をさっさと調べた。
すると、検索結果が表示された途端にイルーゾォは顔を真っ赤に染めた。
口に手を当てて、困惑を隠せずにいる。

イルーゾォは、何かを決心した表情になって、後ろの人物にこっちに来て?と要求した。
大人しくイルーゾォの方へ行く先ほどまで、後ろにいた人物は、少しだけ頬を赤らめている。

イルーゾォはだんだんと顔を近づけて、髪に口付けされたのと同じように優しく首筋にキスを注いだ。
イルーゾォに首筋にキスをされて、恥ずかしげに顔を真っ赤に染め上げる。
イルーゾォは、意地悪げにふふんと笑った。

「イルーゾォ……色っぽすぎ」
「そりゃあどうも」


髪へのキス【思慕】
首筋へのキス【執着】
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