短編集

□その口癖が私にこびりついて
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ホルマジオが死んだ。そう聞いたのは、ほんの数分前の出来事。
仲間のリゾットが神妙な様子で、電話をかけてきた。ホルマジオが死んだと言いながら、すまないと繰り返していて、聞いているこっちが申し訳なくなるほどだった。
死因は、イルーゾォから聞くところ、エアロスミスらしい。
きっと、ホルマジオのことだから、しょーがねーなぁとでも言いながら、朽ちたのだろう。私は、あの人のことをよく知っているつもりだ。

ホルマジオが死んで尚、彼のしょーがねーなぁという口癖が頭から全く離れない。
温かい目を私に向けて、しょーがねーなぁって、いつも言ってくれていた。
彼のしょーがねーなぁは、まるで魔法のような気もしていた。彼が口を開くだけで、心が温かくなったりもしたのだから、間違いない。
そんなホルマジオが死んでしまったら、私まで生きた心地がしない。

今日は、好物のボンゴレすらおも喉を通らない。
ホルマジオは、死に際なんと思い死んだのだろうか。きっと遺体が見つかっても、私はそれを目には入れないだろう。

私は、彼が好きだった。
やけに心配性で、お節介で、変なところでキレたりする彼が好きだった。
だが、きっとこれはもう伝えられないし、届くこともないのだろう。
たくさん、後悔はしてきたけど、取り返しのつかない後悔は、これが最初で最後。きっとそう。

あれから、どれくらい経っただろうか。先ほどイルーゾォまでもが死んでしまったという知らせが届いた。
もう、きっと暗殺チームが勝利することは、無いだろう。
私の奥の方から、えげつないほどの虚しさや、悲しさがぐんぐんと込み上げてくる。その感情が私を浸して、私を混ぜてくる。

私は、覚悟を決めた。仇を打つと。
手元のコートを羽織り、口をキュッと結う。ただならぬ感情の中、私は、行く。

後悔は、後悔しないとわからない
だから、後から悔やむと書く。

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