短編集

□もがく
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僕と、名無しさんが出会ったのは、何千年と前のことだっただろうか。もしかしたら、昨日だったかもしれない。それぐらい僕は、あの日のことを鮮明に頭に残している。いや、残っているの方が正しいかもしれない。
勿論、彼女は、死んでなんかいない。まぁ、死ねないのだが、そんなことはどうでもいい。僕は、とんでもない、取り返しのつかないことをしてしまったのだ。

世間一般的に、女ったらしといわれるような僕だけど、彼女に初めて本気の恋心を抱いて、必死で伝えようとした。最初は、慣れない本気に、つたない言葉でしか口にできなかった。
好きだよ。という言葉ですら何年とかかってしまった。それだけ僕は、必死で、名無しさんを壊れ物のように大事にしたのだ。
公けでも女ったらしと結構有名な僕だけど、今回ばかりは、死ぬ気でもがいた。彼女は、初めは、本気にしなかった。
でも、だんだんと僕に心許すようになってきたのだ。

彼女と知り合った日は、桃源郷は、いつものようにすっごく平和だった。
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