短編集

□価値観
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「はっきり言おう。俺と君の価値観はかすってもいないんだよ。」
メローネは、自分の目の前にいる女性にそう言った。なんともいえない冷徹な目で、まるで感情がこもっていないその目は人ではない。暗殺を行う時の目と大して変わらない。
人を蔑み、馬鹿にする目。
「あぁ。そう」
もう何もかもする気を喪失した女性は、さっさとメローネの目の前から消えていく、メローネは困ったと言わんばかりに頭を掻いた。
彼はまた、一人殺してしまったのだ。

メローネは家に帰り、すぐに部屋着に着替え紅茶を淹れ部屋にこもってしまった。
キリキリと紅茶のカップを噛み壊してしまいそうな勢いで噛む、彼の眉間にしわが寄るたびにカップからガチガチと音が鳴る。
メローネの座っているベッドからミシミシと鈍い音が鳴る。
その空間に電話が鳴った。
メローネは、一瞬ビクついてから電話に手をかける。ゆっくり携帯を開き、耳に当てがった。
「誰?」
「私、名無しさん。」
「あぁ。あんたか」
電話を鳴らしたのは、名無しさんという少女だった。
彼女はメローネのただの友人なのだ。遊び仲間でもなく、恋仲でもなく、本当のただの友人だ。
メローネは動揺を隠しつつ、名無しさんに何か用か、と尋ねる。
「いや、これといって用事はないんだけど、なんとなく。」
「じゃあさ、俺のお願い聞いてくれる」
「なに?」
「付き合って。」
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