水中の廃人

□焦り
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「着いたぜ、ここだ。
っ……もうあんな遠くに、行けるのか、名無しさん」
「大丈夫。フィッシャーズ!」
バリバリと何かが破れるような音をたてると同時に名無しさんの体に、鱗やヒレ、エラなどが現れる。イルーゾォは驚いた様子で、その光景を見ていた。

そのままの勢いで、名無しさんは海に入った。
名無しさんは目を疑うような速さで、海を渡り対象に近づく、それでも対象は焦りから全く気がついておらず、名無しさんはどんどんと近づいて行く、名無しさんがスピードを速めるたびに海水がごうごうと吠える。

そして、暗殺対象に限界まで近づいた名無しさんはナイフを一気に振り上げ下ろした。
海水に血液がまるで、染物のように浮かび上がった。

「大丈夫だったか、名無しさん」
「大丈夫。ありがとうイルーゾォ」
「あのスタンドは……?」
「水を操ることができる、自由に。それより、あの二人は!?」

そう名無しさんが発した瞬間、船内へ入る為の壁が勢いよく破れた。
その飛んできた人物は、紛れもないプロシュートであり、息を荒げて胸を上下させている。

「おいプロシュート大丈夫か!?」
「メローネこそ大丈夫かよ……こいつは俺には不利すぎるだろ……」
「おいおいおいおい、しょべぇなぁ……本当に暗殺者かよ」
破れた壁の奥から、先ほどの青年が腕を組んで現れた。
その様子は、呆れ返っているようであり、楽しんでいるようでもあった。

「なにこいつ」
「名無しさん、こいつは氷のスタンド使いだ。
俺のスタンドの弱点みたいなもんだ」
「……すぐそこに港が見えてる、リーダーに連絡するよ。」
名無しさんはそういうと携帯を取り出した。
その瞬間、名無しさんの世界は一気に反転した。すると、ここで連絡してという声が名無しさんに届いた。
名無しさんは携帯を急いで操作すると、耳にあてがって、2コール待った。

「リーダー!大変、早く港に!」
「事情は、後で聞く。待ってろ」
それだけの会話を乱暴に行うと、受話器の下がった方を勢い任せに押す、プチッという音と同時に名無しさんは携帯を閉じた。
名無しさんは半ば無理矢理に鏡から出ると、未だに攻防が続いている。

名無しさんがフィッシャーズで、微量ながらも段々と客船を港に近づけるように仕向ける。
「おい、そこの女。なにしてやがった!」
「別に」
「別にってなんだよ!曖昧すぎんだよ。クソが!」

その瞬間、名無しさんの目の前の青年の口内から大量の剃刀が溢れ出た。
嘔吐するような呻き声を上げる青年は、苦し紛れに床に手をついた。
名無しさんのフィッシャーズは既に、港に船をつけており、リゾットは、既に船に乗り込んでいた。
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