Girlish Maiden

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ハリーが到着した時、飛鳥は会議に参加していた。
上で彼の怒声らしきものが下まで微かに響き、部屋が一瞬しんと静まった。

飛鳥は持っていたボールペンをくるりと回し、机にヘッドをかつんと当てた。
静止した会議がその音を合図に再開される。

夕飯の時刻に再び中断された時、ウィーズリー夫人が席から動かない飛鳥を見て少し眉を上げた。

「今日はいいの、アスカ?」
「全部話すからいいのよ。あなたの息子さん達にも、いいかしら?モリー」
「……ええ、構いませんよ」

昨日まで飛鳥は会議が始まる時間に姿あらわしし、終わると同時に姿くらまししていた。学生達とばったり会わないようにするためだったが、頻繁に日本へ行ったり外出していたり、本部にいても部屋でデスクワークをしていたりと多忙を極めていた。朝食や昼食を外で取ることもざらにあり、夕食も部屋でということが多かった。
つまりは騎士団員以外に会う機会というものが限りなく少なかったのである。

「あなたはよくやりましたよ、アスカ。でもねぇ、六年はやりすぎだったと思いますよ。あなた、本当にやつれて……。ずっと咳をしているし、無理をしたんでしょう」
「無理なんかじゃなかったわ、モリー。楽しかったのよ。近くで成長を見られたんだもの」

本音だった。
同級生やハリー。子供だった彼らがたった数年で、大人へと変わっていった。
そのことがたまらなく嬉しくて、自然に笑顔になれた。

ウィーズリー夫人は困った子供を見るような顔になったが、何も言わずに廊下へ続くドアの方へ行った。会議が気になって階上で聞き耳を立てている学生組のところに向かったのだ。
飛鳥は席についたまま、地図を広げてウィーズリー氏とビルが何か相談しているのを眺めていた。

「──何でアスカが会議に参加してるんだ?」
「俺達は成人していても駄目だって言ったじゃないか!」

入ってきてすぐさま、双子が声を上げた。
飛鳥は目の前の羊皮紙を消し、ゆっくりそちらを見た。
ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニーが彼らの後ろで目を瞠っている。否、ハーマイオニーはあまり驚いていない。

「アスカ……」
「調べたの?ハーマイオニー。それで、誰にも言わなかったのね」

ハーマイオニーが頷く。学生達の視線が彼女に集まった。
テーブルに頬杖をつき、飛鳥は気怠げに言った。

「言わないでくれてありがとう。それじゃあ、種明かしをしましょうか」
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