Girlish Maiden

□T
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「さて、と……」

廃ビルの屋上に姿あらわしした飛鳥は腕を組み、フェンスまで行くと下を見下ろした。
近くの通りには人はいないが少し離れた場所には繁華街があり、賑わっていた。

飛鳥は人気のない通りまで姿あらわしで移動し、今度はまた歩き始めた。
ちょうど部活が終わった時間帯なのか、制服姿の高校生がちらほら見受けられた。

「……確か、新一くんも探偵やって有希子さん言うてはったなぁ」

彼も高校生だったはずだ。
運が良ければ会えるかもしれないと飛鳥は思ったものの、十年会っていないことを思い出して即座に諦めた。もし偶然会ったとしても、互いに分からないだろう。

去年と同じように地図を取り出し、飛鳥は道を歩いた。そして古びたビルの前まで来るとノックを二度、時間を置いてまたもう一度繰り返す。
そして開いた日本魔法省の入口を通り、飛鳥は中へと入った。
複数ある受付のうちのひとつ、来客用受付と書かれたプレートの元へ行く。
先日ダンブルドアから送られてきた手紙を取り出し、それを見せて受付嬢に話しかけた。

「ヨーロッパにあるホグワーツ魔法魔術学校から来た者です。大臣とお話したいのですが、アポは取れますか?」
「ホグワーツからのお客様ですね。お名前を伺っても?」
「東雲飛鳥です」
「ありがとうございます。ただいま手隙の秘書がおりますので、15階の第36会議室まで6番エレベーターで移動をお願い致します」

受付嬢に礼を言い、飛鳥は6番エレベーターに乗って15階を目指した。
第36会議室の前まで来ると、ノックをして返事を待った。

「お待ちしておりました、東雲様」

出てきたのは、スーツを着た若い男だった。
飛鳥に椅子を勧め、紅茶を用意するとその男は向かいに座った。

「私は五十嵐と申します。それで──、ご用件は?」
「闇の帝王、つまりは例のあの人が復活したとの情報を入手致しました」

飛鳥は一旦そこで言葉を切り、相手の反応を待った。男が発言の意味を理解するまでに時間がかかるだろうと思ったのである。
五十嵐は飛鳥の予想通り、しばらく沈黙を貫いた。
あまりの衝撃に言葉が出ないようだった。

「例のあの人は……、死んだはずでは……?」
「完全には死んでいなかったということです」

前回のヴォルデモートの支配はイギリスのみに留まっていた。だが、今回は他の国にも影響を及ぼすかもしれない。
ヴォルデモートが君臨していた英国の暗黒時代は、日本でも有名だ。
大々的なことがあまりできないために魔法界同士の国際的な交流は限られているが、人と共に情報は流れてくる。

「例のあの人の影響力は、ご存知のはずです。最悪の事態を考えましょう。力を取り戻し、政権を握ってしまえば、その後はどうなるか」

どんどん青ざめていく秘書を見つめ、飛鳥は畳み掛けた。

「彼は、他の国にまで手を出すでしょう。……世界大戦です。例のあの人がそれに勝ってしまえば、世界はどうなりますか?」
「そん、な──ことが──」
「ですので、そんなことにならないために手を組み、対抗するのです。世界大戦の恐ろしさは、マグルが起こしたことでよくご存知でしょう?」
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