Girlish Maiden

□XIV
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マルフォイが広めたかったのだろう飛鳥の噂は、彼の思惑通りにはいかなかった。
というのもダンスパーティのことで皆浮かれているのもあり、関心があまり寄せられなかったのである。ハリーほど有名でもない飛鳥のことを取り立てて話題にするほど、生徒達は暇ではない。そもそも大半の生徒は「オンミョウジってなに?」から始まるだろう。

チョウと別れ、飛鳥は少しすっきりした気分でグリフィンドールの談話室に戻った。
マルフォイに嫌味を言えたことで発散できたらしい。
上機嫌で暖炉の前に行こうとした飛鳥の腕を、背後から誰かが掴んだ。

「アスカ、俺とダンスパーティに行かないか?」

少し緊張した面持ちで、ジョージ・ウィーズリーが息を弾ませながら申し込んだ。
相手を確認すると、飛鳥はあっさり「いいわよ」と返事をした。

「……はっ?」
「だから、いいわよ」

きょとんとしたジョージに飛鳥は首を傾げる。
ジョージは何度か瞬きをすると、恐る恐る横にいるフレッドを見た。
双子を交互に見て、飛鳥は怪訝な顔をしてフレッドに説明を求めた。

「……いや、実は俺たち、さっきのを見ちまって」
「うん」
「アスカが傷ついてると思った相棒がもたついてる場合じゃないとようやく踏み切ったのさ」
「…?……???」

むしろ気分上々だった飛鳥はさらにわけが分からず、困った顔をした。

「ジョージはずっとアスカに申し込もうとしてたんだ。けど、アスカのことだから知らないやつとは行かないだろうししばらくは大丈夫だろうって思ってたんだよ」
「すごい。そこまでは大当たりよ」

ぱちぱち拍手をしたが、なぜそこまで自分のことを分かっておいて頓珍漢な方向に向かったのだろうか。飛鳥は未だに分からなかった。

「ボーバトンの生徒に断ってるのを見て、ひょっとしたら誘われること自体が嫌なんじゃないかと思えてきて……」

あの断り方に問題があったらしい。飛鳥は反省した。
確かに少し冷たすぎたかもしれない。

「私は誘われても誘われなくてもクリスマスは残るのよ。なら、どうせ行くなら知ってる人とがいいと思ってただけ。知り合いの誰からも誘われないなら行く気はなかったわ」
「ほらな、言っただろ。焦らなくても大丈夫だって」
「フレッドだってやばいかもしれないとか言ってたじゃないか」

ソファの方へ移動しながら、双子はああだこうだと軽い口論を始めていた。
腰を落ち着かせた時、ぴたりと口喧嘩をやめたフレッドが真面目な顔で飛鳥に問いかけた。

「陰陽師の家ってのは、本当なのか?」
「あら、あれはマルフォイのでたらめかもしれないわよ」
「茶化さないでくれ、アスカ。そろそろ腹を割って話す時だ」
「………………」

──限界なのかもしれない。飛鳥は唐突に悟った。
彼らはもう誤魔化しが効く子供ではなくなったのだ。

(……この付き合いも、もう六年になるんやね)

それだけ積み重ねた嘘だ。貫き通さなければ、飛鳥の立つ瀬がない。

「そのうち話すわよ」

隠し事をしているのを認め、曖昧な言葉で約束をした。
いつものように笑ってその場をやり過ごして、また新たな誤魔化しの上塗り。
チクリと痛んだ心には、気付かないふりをした。
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