Girlish Maiden

□XIII
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フラー、クラムと続き、ついにハリーの番になっていた。
スタンドにはハンガリー・ホーンテールが待ち構え、棘だらけの尾を地面にめり込ませていた。

ハーマイオニーは既に恐怖で竦み上がり、ロンの腕をぎゅうぎゅうに握っている。
そのロンもハンガリー・ホーンテールのあまりの狂暴さに、言葉もないようだった。
ホイッスルが鳴り、ハリーが入ってくる。

観衆は大興奮で声を上げた。
友好的なものは多く見積もって半分といったところだろうか。グリフィンドール以外の寮からは「ゴブレットを騙して選ばれるように仕組んだ」と思われ、敵視されている状況を思えば良い方だ。

ハリーが杖を上げた。
全員が、何をするのだろうと注目する中。

「アクシオ ファイアボルト!」

ハリーが叫ぶ。
数秒後、凄まじい勢いで箒が飛んでくるのを、飛鳥は見た。
ハーマイオニーが声を上げ、ピョンピョン跳ねた。胸の前で両手を握りしめ、飛鳥は祈った。
ファイアボルトに跨ったハリーが、地面を蹴る。最高の箒は瞬く間にハリーを遥か上空へと連れて行った。

誰もが熱狂できるものは、我を忘れさせてくれる。もはや敵味方関係なく大興奮している観衆を見て、飛鳥は一人微笑んだ。
これこそが、この大会の目的なのだ。

ホーンテール目掛け、ハリーが急降下してくる。
ドラゴンは首をもたげ、ハリーを狙って口から炎を吐いた──他のどの種よりも強力な火炎だった。
完全に動きを読んでいたハリーが、それよりも早く方向を変え上昇した。
クィディッチの試合の時ような、堂々たる飛びっぷりだった。

ハリーは大丈夫だ。飛鳥は安心した。
自分を保つことを真っ先に取り戻した。彼はいつも通り飛ぶことができる。
ホーンテールの尻尾が肩をかすめたが、ハリーは気に留めなかった。
そしてドラゴンの注意を引きつけ、卵から離れるように少しずつ誘導していった。

そして、ドラゴンが後脚で立った時──目にも留まらぬ速さでハリーは急降下していく。
卵めがけ、全速力で疾駆する。

ホーンテールの身体に隠れて、一瞬姿が見えなくなる。
次の瞬間、ハリーは空へとまた舞い戻っていた。

「やった!やったわ、ハリー!!」
「取った!最短時間だ!」

満面の笑みで、グリフィンドール生だけでなく大観衆全体が拍手喝采していた。
手を叩きながら、飛鳥は隣にいるハーマイオニーとロンに目配せした。

「テントまで行ってきたら?そこから出られるわ」

顔に爪の跡をつけたハーマイオニーと、青い顔をしているロンは同時に頷いた。
群衆をかき分けて出ていく二人を見送り、飛鳥はちょっと笑った。

「若いわねぇ」
「よく喧嘩するよな、あの三人」
「あなた達もたまに喧嘩してるじゃない」

背の高さの関係で後ろの方にいたジョージがひょっこり首を出す。
もっとも、双子の喧嘩は一日ほどで収束するのだが。

「さすが小人ちゃん。埋もれちまいそうだな」
「身長を伸ばす薬の開発はまだかしら?」
「検討しておくよ」

やはり後ろから出てきたフレッドが飛鳥をからかった。
冗談を言い合っていると、審査員達が数字を掲げ始めていた。

マダム・マクシームは8を、クラウチ氏は9、ダンブルドアも9点だ。バグマンは10を上げ、カルカロフは4。

「一位だ!」
「やった!」

クラムに並び、同点でハリーが一位まで上り詰めた。
双子やアンジェリーナに引っ張られ、飛鳥はスタンドから走って出た。
祝宴を上げる準備のために、彼らは城の方へと一目散に駆けた。
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