Girlish Maiden

□XIII
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11月24日──第一の課題の日。
飛鳥はハーマイオニー、ロン、ネビルらと共に友人達と観戦へ向かった。
ハーマイオニーは何か言いたそうに飛鳥をチラチラ見ていたが、人の多い場所では言えないと判断したのか口は閉ざしたままだった。

普段クィディッチ競技場として使われているそこは、既に巨大なドラゴンが鎮座していた。
少し離れた所にいるドラゴン使いの中にチャーリーがいるのを発見し、双子とロンは兄に手を振った。

「ドラゴン……ドラゴン……!?」

ネビルは真っ青になってガタガタ震えていた。

「スウェーデン・ショート-スナウト種!調教やペットにするには不可能なくらい危険なドラゴンだわ……」

ハーマイオニーも怖々解説したが、それがネビルの不安を煽っていることには気がついていなかった。

「大丈夫かしら……ハリーは何番目なの?あまり凶暴なドラゴンに当たらないといいけど……」
「ハリーは最後みたいよ。ハンガリー・ホーンテール。……引きが良いんだか悪いんだか」

審査員達が入ってきた。
それと同時に選手の順番と相手のドラゴンが発表される。

一番、セドリック・ディゴリー。スウェーデン・ショート-スナウト種。
二番、フラー・デラクール。ウェールズ・グリーン種。
三番、ビクトール・クラム。チャイニーズ・ファイアボール種。
四番、ハリー・ポッター。ハンガリー・ホーンテール。

ホイッスルが鳴り、セドリックが入場した。
大歓声が上がり、ドラゴン使い達が一斉にどこかへ去っていった。
するとそれまで大人しくしていたドラゴンがむくりと立ち上がり、地面にある卵を守るように抱え込んだ。
大慌てでどこかからか駆けてきたバグマンが解説台に行き、普段はリーが持っているマイクを取った。

「最初の選手は、ホグワーツのセドリック・ディゴリー!相手はスウェーデン・ショート-スナウト種。与えられた課題は、ドラゴンが守っている金の卵を取ることです!」
「こんなの──普通に──死んじゃう──」

ハーマイオニーが金切り声を上げる。
大観衆が見つめる中、セドリックは近くの岩を大きな犬に変身させた。
走り回るラブラドールをドラゴンが目で追う。尻尾を何度か地面に叩きつけ、ドラゴンがのそりと立ち上がった。
競技場の端まで行ってしまった犬を追うため、ドラゴンが歩き出した。
バシンと尾がもう一度しなり、ショート-スナウトが犬に向かって炎を噴いた。
悲鳴が上がり、何人かの女子が目を覆った。
すれすれのところで火を避け、ラブラドールは先程よりも速く走った。
ドラゴンの目を釘付けにさせておき、その間に卵を取る作戦だったのだろう。それは途中までは、上手くいっていた。

「あぁぁぁ──!これは!うまい動きです!」

解説のバグマンが興奮に叫ぶ。
セドリックが卵の方へ駆けていた。しかし、その次の瞬間にショート-スナウトが彼の方に火炎を噴射していた。

「危ない!」
「残念、だめか!?」

息を呑む者、叫ぶ者で埋め尽くされた。
セドリックは伏せることでかろうじて炎を逃れたが、勢いが強すぎた。炎は身体をかすめ、肌を焼いた。
しかしセドリックは立ち止まらず、卵に向かって一直線に全速力で走った。
ラブラドールそっちのけで、踵を返したドラゴンが追ってくる。
凶悪な爪がその背中に迫る寸前に、セドリックのその手が卵を掴んだ。

「──やった!!」

大歓声が上がる。
わっと立ち上がり、沸く観衆の方──ハッフルパフの生徒達に向かって、セドリックが手を振った。
ドラゴン使いがすぐさま飛び出し、数人がかりで失神呪文をかけていた。

「チャーリーも大変だなぁ」
「命懸けだよな」

飛鳥は詰めていた息を吐き、席に座った。
無茶苦茶な祭りだが、それなりに楽しい。観客は。

「ハリーはどうするのかしら……」

誰よりも小さく年齢も低い少年を慮り、飛鳥は不安に眉を下げた。
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