Girlish Maiden

□XI
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学生達からしてみれば、悪夢のようだった夜から一週間。

9と3/4番線からホグワーツ特急に乗り、彼らは無事ホグワーツの大広間に着席していた。
ひとしきり食べた後に校長のアルバス・ダンブルドアが立ち上がり、話を始めた。
禁止事項を告げ、寮対抗クィディッチ試合を今年は取りやめることを宣言。各クィディッチチームは絶句していたが、ダンブルドアの話は続いていた。

「これは、十月に始まり、今年度の終わりまで続くイベントのためじゃ。先生方もほとんどの時間とエネルギーをこの行事のために費やすことになる。――しかしじゃ、わしは皆がこの行事を大いに楽しむであろうと確信しておる。ここに大いなる喜びを持って発表しよう。今年、ホグワーツで――」

バタンという音と、大きな雷鳴がダンブルドアの言葉を遮った。
戸口にステッキに寄りかかった一人の男が立っていた。
男は教職員テーブルの方へ歪な足取りで歩き出した。

「……マッド-アイ・ムーディ?」

雷が照らし出した男の顔を見て、飛鳥は無意識に呟いていた。
皮膚は傷だらけ。鼻は削がれ、片目は義眼。片足も奪われており、そちらも義足だ。
元『闇祓い(オーラー)』。アズカバンにいる囚人の半分は彼が捕らえたというほどの腕の持ち主だ。
今朝方、何らかのトラブルを起こしたということでウィーズリー氏が飛び出して行っていたが――。

ムーディはダンブルドアと握手をし、空いている席に腰を下ろした。

「『闇の魔術に対する防衛術』の新しい先生をご紹介しよう。ムーディ先生じゃ」

ダンブルドアとハグリッド以外、誰も拍手をしなかった。
飛鳥は呆気に取られていたし、生徒達は完全にムーディの不気味な空気に呑まれて硬直していた。

「先程言いかけていたのじゃが。これから数ヶ月にわたり、我が校はまことに心躍るイベントを主催するという光栄に浴する。この催しはここ百年以上行われていない。この開催を発表するのは、わしとしても大いに嬉しい。今年、ホグワーツで、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を行う」
「ご冗談でしょう!」

フレッドが大声でそう言った。
ムーディの登場で張り詰めていた空気が緩み、全員が笑い出した。

「ミスター・ウィーズリー、わしは決して冗談など言っておらんよ」

ダンブルドアも微笑み、フレッドにそう返した。

「さて、この試合がいかなるものか、しらない諸君もおろう。そこで、とっくに知っている諸君にはお許しを願って、簡単に説明するでの。その間、知っている諸君は自由勝手に他のことを考えていてよろしい」

――三大魔法学校対抗試合はおよそ七百年前、ヨーロッパの三大魔法学校の親善試合として始まった。その三校とはホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングのことで、五年に一度開催され、各校から代表選手が一人ずつ選ばれる。三人は三つの魔法競技を争い、戦った。夥しい数の死者により競技そのものが中止されるまで、これは国交を深めるための最も優れた方法だった。

「ボーバトンとダームストラングの校長が、代表選手の最終候補生を連れて十月に来校し、ハロウィーンの日に学校代表選手三人の選考が行われる。優勝杯、学校の栄誉、そして選手個人に与えられる賞金一千ガリオンを賭けて戦うのに誰が最も相応しいかを、公明正大なる審査員が決めるのじゃ」

――ただし、これには年齢制限が設けられる。十七歳に満たない生徒は、代表にはなれない。

ウィーズリーの双子を筆頭に、不満が上がった。7年生は全員資格を持つが、6年生は十月末までに誕生日を迎えていなければならない。フレッドとジョージの誕生日は四月であるため、到底間に合わないのだ。
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