Girlish Maiden

□IX
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鳴り響くアラームの音に、飛鳥は目を覚ました。
ぼやける視界と頭をなんとか稼働させ、のろのろと起き上がる。
音を鳴らしながら飛び回る時計を捕まえ、スイッチをオフにする。
窓を見れば、まだ太陽も昇っていなかった。
隣ではジニーとハーマイオニーがまだベッドで夢の中だ。
動きを止めた時計をベッドサイドに置き、欠伸をしながら立ち上がった。
手早く着替えを済ませ、少女達を起こしにかかった。

「ハーマイオニー、ジニー。時間よ」

誰かが階段を上がる足音が近づいてくる。
おそらく夫人だろう。二人の身体を揺らしながら、飛鳥は扉の方を振り返った。

「起きなさい、朝よ!……あら、アスカ!もう起きてたのね」
「おはようございます。さっき起きたところです」

容赦なく少女達を揺さぶり起こし、ウィーズリー夫人は出ていった。
放っておくと座ったまま寝てしまいそうな二人の手を掴んで立たせ、飛鳥は声をかけた。

「無理矢理にでも動かないと覚醒しないわよ。ほら、着替えて」

ようやく寝間着を脱ぎ始めた二人を見て、飛鳥は少し眉を下げて笑った。

昨晩、ついおしゃべりに夢中になるあまり日付を越すまで眠りにつかなかったことが原因なのだが、今それを言っても仕方ない。
優等生タイプのハーマイオニーでも、時間を忘れて話し込んだ。
彼女もやはり女の子なのだと飛鳥は嬉しく思った。

「アスカ……起きるの、早いのね……。まるで軍人みたい」

普段からボサボサの髪の毛をさらに爆発させたハーマイオニーが眠そうに言う。
ブラシを渡すとハーマイオニーは丁寧とは言い難い手つきで梳かし、抜けた毛を捨ててから飛鳥に返却した。
お洒落に頓着しないと常々思っていたが、ここまでかと飛鳥は苦笑した。

「ジニー、着替えは終わった?」
「ええ」
「じゃあ、下りましょう」

二人を連れて1階へ行くと、既に学生達とウィーズリー氏がテーブルについていた。
全員オートミールの入った皿を前にし、話に興じている。

「どうしてこんなに早起きしなきゃいけないの?」

ジニーが目を擦りながら席に座った。
その横にハーマイオニーと並び、飛鳥は夫人から渡されたオートミールに蜂蜜をかけた。

「結構歩かなくちゃならないんだ」
「歩く?僕たち、ワールドカップのところまで歩いていくんですか?」

ハリーが驚いた顔でウィーズリー氏に尋ねた。

「いや、いや、それは何キロも向こうだ。少し歩くだけだよ。マグルの注意を引かないようにしながら、大勢の魔法使いが集まるのは非常に難しい。私たちは普段でさえ、どうやって移動するかについて細心の注意を払わなければならない。ましてや、クィディッチ・ワールドカップのような一大イベントはなおさらだ――」
「ジョージ!」

ウィーズリー夫人の鋭い声が飛んだ。
全員が飛び上がり、飛鳥は持っていたスプーンを取り落としかけた。

「どうしたの?」

また何か悪戯グッズを隠し持っていたのが見つかったのだろう。
ジョージはしらばっくれたが、夫人の呼び寄せ呪文には敵わなかった。
双子のポケットやジャケットの裏地、ジーンズの折り目から次々とベロベロ飴(トン・タン・トフィー)が飛び出てくる。
体中から大量の飴が奪い去られていく光景は、なかなかお目にかかれないだろう。
オートミールを口に運びながら、飛鳥は呆れ半分、面白さ半分の表情を浮かべた。

「僕たち、それを開発するのに6ヶ月もかかったんだ!」
「おや、ご立派な6ヶ月の過ごし方ですこと!ふくろう試験の点が低かったのも当然だわね」

フレッドと夫人が言い合う。

「アスカから聞きましたよ!あなた達がほとんど勉強してなかったってね!」
「裏切ったのか、アスカ!?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれるかしら!?」

聞かれたから答えたまでだ、と飛鳥も奮然と言った。
口止めもされていないし、開発に協力した覚えもない。
完全な巻き込み事故である。
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