Girlish Maiden

□VIII
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数週間後。
再びジョージから招待が届き、飛鳥は荷物を持って隠れ穴に到着した。
暖炉から出るとウィーズリー夫人が飛鳥に駆け寄り、満面の笑顔で抱きしめた。

「あなたがアスカね!ようこそ。モリー・ウィーズリーよ」
「お世話になります。アスカ・イツミヤです」
「さぁさ、こっちにいらっしゃいな。ジニー、部屋に案内してあげなさい」

飛鳥がちらりと部屋を見渡すと、パーシー以外の赤毛の兄弟が全員揃い、テーブルに座っていた。
ジニーが立ち上がって飛鳥の荷物を持つ。

「あ、それお土産よ。人数分以上あるから、みんなでどうぞ」
「お土産?わぁ、日本のお菓子!」

ジニーの声にフレッドとジョージが椅子を蹴り飛ばして立ち上がった。
押し合いながら妹の手元を覗き込もうとする双子に、飛鳥は少し大きい包みを押し付ける。

「はい。言われてたものよ」
「お!……名前なんだっけ?」
「甚平よ」

早速包みを開け始めた双子に背を向け、飛鳥はジニーの案内で部屋へと階段で上っていった。
隠れ穴は上に長い家だった。廊下や部屋のひとつひとつは狭いが、名前の通り隠れ家のようでなかなか見応えがある。

「面白いお家ね」
「狭くて動きにくいでしょ?」
「大丈夫よ。そういえば、ハリーとハーマイオニーも来るのよね?」
「ええ」

荷物を部屋に置き、階段を下る。
その途中で、ジニーがにやにや笑いながら飛鳥を振り返った。

「どっちがアスカを誘ったの?フレッド?ジョージ?」
「あー……、言ってきたのはジョージだったけど、フレッドもその場にいたわよ」

ジニーの意図を汲んでそう言えば、彼女はつまらなそうに唇を尖らせた。

再びキッチンへ行った時に、飛鳥は見知らぬ二人に近付いた。

「はじめまして。あなた達がビルとチャーリー?」
「ああ、そうだよ。よろしく、アスカ」
「こちらこそ」

握手を交わし、互いにニコリと笑う。
二人は少し戸惑った顔をしていたが、それを口には出さなかった。
双子が同級生の女子を招いたことが珍しいのだろう。ウィーズリー夫人は逆にニコニコしていた。

「ハーマイオニーがもうすぐ来るはずですよ。アスカ、ここに座っててちょうだい。すぐお茶を入れますからね」
「ありがとうございます」

礼を言い、飛鳥はビルの隣に座った。
一向に姿の見せない青年を探し、ビルに問いかける。

「パーシーはいないの?」
「いるけど、鍋に夢中でね。忙しいみたいだ」
「……鍋?」

三男のパーシーは今年魔法省に就職したはずだが、と飛鳥は首を傾げた。
何か血迷って鍋の会社にでも入ったのだろうか。

「魔法省の国際魔法協力部だよ。ほら、あそこは輸入品とかも取り扱うだろう?」
「……鍋の成分でも調べてるの?家で?」
「厚さの標準を定めるそうだよ。パースは仕事が好きみたいだからなぁ」

それは家でやることではないだろう、と飛鳥は沈黙した。
パーシーの性格(ガリ勉)はなんとなく知っているが、ここまで酷かっただろうか。
呆れて閉口した飛鳥に、今度はビルが質問を投げかけた。

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