Girlish Maiden

□X
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「もう無理」「だめだった」「今年でこれなら再来年どうなるんだ」等々、地から這い出た亡霊のような呻きを上げ、全員がその場に倒れ伏した。
ようやく終わったことによる開放感よりも、五年生と七年生は寝不足とストレスで疲労困憊だった。

夕食後グリフィンドール塔へ戻り、倒れ込むようにソファへ座ったアンジェリーナが重い溜息を吐いた。

「疲れたってもんじゃないわね……。アスカ?どうしたの」

飛鳥は窓の方をぼうっと見ていた。
その目はどこか遠くを見ているようで、心ここに在らずといった様子である。
アンジェリーナの声で我に返り、飛鳥は首を振った。

「なんでもないわ」
「そう?」

飛鳥は右の耳朶を弄りながら、笑顔を見せた。
柔らかく、おっとりしたその表情はいつもとなんら変わりはない。そのいつも通りの飛鳥に安心し、アンジェリーナは彼女から意識を逸らした。

それを見た飛鳥は窓辺へ近付く。壁に寄り掛かり、校庭の方を見下ろした。

もう半分も見えない太陽が落ちていく中、校庭にぽつんと立つハグリッドの小屋がいやに目立った。
ヒッポグリフ――バックビークの処刑は日没となっていた。もう終わった頃だろう。
小屋から目を離し、飛鳥は門の方へ視線を移す。彼女には、黒く蠢く幾つもの影がゆらゆらと漂っているのが見えた。
物欲しそうに、生気に飢えた彼らはずっと宙で揺れている。

吸魂鬼(ディメンター)……」

飛鳥は生理的な嫌悪感に思わず顔をしかめた。

そうしているうちに夜の帳が下り、校庭は闇に包まれる。
飛鳥は窓際から離れ、階段を登って寝室へ向かった。

「……まだ、大丈夫」

自分に言い聞かせるように深呼吸し、トランクの中から細長い紙の束を取り出した。
赤い文字が模様のように描かれたそれをポケットに入れ、杖を持って立ち上がる。

階段を下り、誰にも悟られることなく飛鳥はグリフィンドール塔を出た。
複雑な階段を次々突破し、最短距離で玄関ホールへ辿り着く。
そうして、談話室を出た数分後。彼女は難無く校庭に立っていた。

「さァて、ほな――……」

いつもの穏やかな飛鳥は一体、どこへ行ったのか。

禁じられた森へ足を向けた彼女の顔からは一切の表情が抜け落ちていた。

無機質な瞳は硬く、宝石のよう。
喩えるならば、黒曜石(オブシディアン)

心眼を持つとされる、魔除けの石。

「お仕事、せなあきまへんえ?」

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