Girlish Maiden

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結論から言えば、クィディッチの試合は無事グリフィンドールの勝利に終わった。

朝食の席で不安がっていたチョウはシリアルを頬張ると元気が出たのか、自信満々にフィールドへ向かった。
そしてそれぞれのチームが並んだ時、彼女がハリーににっこり笑いかけた場面を飛鳥は見逃さなかった。

割とミーハーな面を持つチョウのことだ。クィディッチ自体久しぶりな上、ハリー相手の試合は初めてである。飛鳥が思っていたよりも、気分が高揚しているらしかった。
試合中もハリーに笑いかけているのを見た時は、淡白な飛鳥も流石に複雑な顔をしたが。
友人が同じ寮の後輩に色仕掛けをしているところを目撃してしまったような、とどのつまりは気まずさを感じたのである。

「まあ。あのやり方はあまりしてほしくないわね。スニッチ、また逃したわよ」

一緒に観戦していた同級生が呆れ顔で言ったのを聞き、飛鳥は視線をアンジェリーナの方へ移しながら頷いた。

「……良い友人だけれど、それに関しては同感だわ」

卑怯だとは言わないが、箒の実力で勝負してほしいと飛鳥は思ったのだった。

スニッチを掴む前、ディメンターに扮したマルフォイ達が現れるという珍事が起こったが、試合は無事ハリーの手で終わらせられた。

「パトローナスの呪文……」

飛鳥が呟く中、大歓声が上がった。
ハリーの杖から噴き出した白銀色の大きな動物はすぐに消えた。勝利に気を取られ、誰もそのことに注意は払っていなかった。
試合の妨害をしたスリザリンはマクゴナガル教授に五十点減点され、処罰を与えられたようだった。


すぐさま談話室でパーティが始まった。
優勝杯を取ったかのような騒ぎの祝宴が夜まで続いた。
フレッドとジョージがどこからか持ってきたバタービールで、飛鳥はアンジェリーナと乾杯していた。
泡と炭酸を楽しみながら飲んでいる飛鳥の横で、アンジェリーナは双子から振る舞われた菓子の出処が気になって仕方がないようだった。

「いったいどうやったの?」

飛鳥も不思議に思って顔を上げたが、二人は笑って答えなかった。

「ハニーデュークスのお菓子よね、これ?」
「そう見えるけど……」

ジョージがばら撒く蛙ミントを片手でキャッチし、アンジェリーナが眉を寄せる。
飛鳥は妙な色の百味ビーンズを口に放り込み、瞬時に顔をしかめた。

「何味だったの?」
「……イワシだったわ」
「まだ当たりね」
「マシな方よ、アスカ」

アリシアとケイティが口々に言った。
アンジェリーナを含めたこの三人はグリフィンドールチームのチェイサーである。
その中でケイティだけ一学年年下だが、アンジェリーナと仲の良い飛鳥とは親交がある。四人でホグズミードへ行くことも多い。

「そういえばレイブンクローのビーターったら……」
「ああ、あれは酷かった」
「名前、なんだったかしら?えーと……」

フレッドとジョージがバタービールの瓶で曲芸をする光景を眺めながら、チェイサー達は試合の話を始めた。
こうなると誰も彼女達を止められない。飛鳥は聞き役に回り、おっとり笑いながら耳を傾けたのだった。


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