夕闇イデア

□V
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安室はあっという間にどこからかスタッフの作業着を無断拝借し、堂々と観覧車内部に潜り込んで行った。
凛桜はその途中、コナンを見つけたので彼と合流していた。

「凛桜さん、何でここに」
「赤井さんに協力を要請されてね。途中で下りるのも何だから、安室さん助けたついでに着いてきたの」
「安室さんと来たの!?」

立入禁止と書かれた階段を迷いなく駆け上り、2人も内部にたどり着く。
どこに行くかはコナンに任せ、凛桜はその後をついて行った。

「奴らが仕掛けてくるとすれば、人目につかず、警戒も手薄になるこの観覧車内部に違いねェ…!」
「さすが名探偵。私だったらあの変な組織と水族館なんて普通結び付けないなぁ」

冗談混じりに言った凛桜だったが、コナンは焦って聞こえていないようだった。
猪突猛進なところは安室と似ているかもしれない。

「一刻も早く計画を暴いて、公安とFBIに伝えねェと!」
「あ、赤井さんだ」

足音を聞き取り、その方向を見る。
つられてコナンもそちらを見た。

「……なに、あれ?」

その拍子にあるものを発見し、凛桜は首を傾げた。
コナンも眼鏡を操作して調べている。

「コード……?まさか……!」

そしてそのままさらに上へ続く階段を駆け上って行く探偵を追い、凛桜は気配を探った。
赤井は観覧車の頂上、安室もそこを目指している。

「…………まさか」

思わず眉間をしかめた。
上空の風と観覧車のモーター音で、会話は聞き取れない。
だが、不穏な空気であることはすぐに分かった。

「あんの……猪突猛進男め……」

ひくっと凛桜の口元が引きつった。
何やら殴り合いをしているようで、微かに鈍い音も聞こえてくる。
一旦内部のことはコナンに任せ、凛桜はその場で跳躍した。
階段を上る手間が惜しかったのだ。
凛桜は次々に上の層を目指した。
その間にも彼らは喧嘩を繰り広げているらしく、観覧車の上の方が若干揺れている。
花火が打ち上がり、音は一層聞こえなくなった。

「あーもー……」

ため息を吐き、凛桜はやや強めに床を蹴った。
着地して上を仰ぐと、不安定な足場で揉み合いになっている男2人が見えた。
凛桜は額に青筋を浮かべた。
先程よりも強く、跳ね上がる。
花火の音が耳元で響き、反射的に顔をしかめた。



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