夕闇イデア

□W
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トンネルを抜けた。
死んでいる男の部屋に入った世良とコナン以外の七人は、扉を境にして様子を伺っていた。

「これってガチで殺人事件なの!?」
「ああ、誰かがこの人のこめかみを拳銃で撃ち抜いたんだ」
「で、でもこの部屋チェーンロックが掛かってたから、無理矢理鎖をひきちぎって入ったよね?だから自殺なんじゃない?」

よく引きちぎれたな、と凛桜は別の所に関心を持った。
蘭の後ろから扉を覗き込むと、確かに鎖が中ほどでちぎれているのが確認できた。

「そのロックを掛けた方法はまだ謎だけど……。こめかみの銃創の周りに焦げ跡がない。離れた位置で撃たれた証拠さ!拳銃で自分の頭を撃つ場合、銃口は頭に密着させるはずだから」

世良が自身満々に言い切った。
なぜ一介の女子高校生が銃創に詳しいのか。
凛桜は思わず天井を仰いだ。
世も末である。

「でもさー、撃つ直前になって思わず離しちゃったとかは?」
「それはないと思うよ。拳銃の先にサイレンサーが付いてるし」

あ、中身が17歳だと隠す気ないなコイツ。
呆れながらも凛桜は止めなかった。
止めても無駄だと既に知っていたからである。
大人だけでなく刑事の前でもずば抜けた頭脳を披露してみせる彼だ。
今までもこの調子でやってきたのだろう。
少々警戒心が無さすぎる気がするが、危なくなったら助ければいいか、と凛桜も放置していた。

「でもまあ、犯人は確実にこの列車内だ。逃しはしないさ!」

にっと不敵に笑った世良の横で、コナンの携帯が鳴った。

「…………」

――来たか。
凛桜は目を細めた。
画面を見たコナンの顔色が一瞬、険しくなる。
周囲にそれを悟られる前に彼は探偵団の方を向き、彼らに帰るように言った。

「とりあえずオメーらは蘭姉ちゃん達と部屋に戻ってなよ」

だが、それで引き下がる3人ではない。

「えー、ボク達も何か手伝いますよ!」
「歩美もー!」

子供たちは不満げな顔をし、口々にそう言った。
だが。

「余計な事はすんな!俺が戻って来るまで部屋に鍵かけて、誰が訪ねて来ても絶対開けるんじゃねーぞ!!」

組織のことを知らされて危機感が一気に跳ね上がったらしい。
切迫した表情に、四人はきょとんとしている。

「何よ急に……」
「怖えーぞお前……」
「あ、だから……殺人犯がうろついてるから危ないだろ?」
「そうだよ。戻ろ?」

さすがにフォローが必要だろうと思い、口を出した。
騒ぎを聞きつけた一等車の他の客と車掌も、部屋の周辺に集まってきた。
一人、誤魔化しきれない血の香りを纏う犯人も。



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