色の消えた青春の1ページ
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跡部と細かいことを話し合った、次の日の朝。
朝練があるとのことで、優羅は彼と一緒に車に乗って登校していた。
「久しぶりのリアル高級車……。うわあ……」
微妙に嫌そうな、だが嬉しそうな声音である。
「やっぱ嫌だな……。何度乗っても慣れないし」
「とか言いつつ目輝かして外見てんのは誰だよ」
呆れたように言う跡部を振り返る。
「だって知らない場所だし。見とかなきゃ」
肩をすくめ、跡部は口を開いた。
「で、結局どうするんだ?」
訊ねているのは、昨日結局決まらなかったこと――テニス部のマネージャーになるかならないか、ということである。
マネージャーになれば、確かに常に近くにいることができる。
だが、どうしても跡部にずっと張り付いて監視することができない。
頼みの虹次もいつもいるわけではない。
となると、マネージャーを諦め、少し遠くでこっそり隠れて跡部を見ているしかない。
マネージャーになるかならないか、と問われればならない方を選ぶだろう。
なのに迷っているのには理由があった。
何らか形でテニス部に入らなければ、合宿に参加できないのである。
結局、マネージャーをしなければならないのだ。
「合宿までに決着がつくかもしれないし、つかないかもしれない。テニス部はファンが異常にいるから、マネージャーになったら嫌でも目立つ……。合宿って、いつからだっけ?」
「終業式の次の日から一週間だ。俺様の別荘でやる」
「ふーん。じゃあさ、合宿の二日前に入部届出すのってあり?」
無茶苦茶なことを言っているが、それが一番の道だった。
目立たず、ひっそりと……
仕事が終われば、何の疑問も抱かせず消えることが目的。
どこに行ったのか、なぜいなくなったのか、問われることなどないように。
だから、青春を送れない。
青春の中にいて、そこに溶け込んでいても、浮いている。いわば、異質な存在。
(……青春を送ることが目的じゃないんだけど、ね)
少しだけ、夢見てしまう。
いつ死んでもおかしくないのに。
(いや……、だからかな。所謂、ないものねだり)
ふう、と息を吐く。
余計な考えを振り払った。
「……まあ、いいだろうな。入部していることには変わりねえ。俺が許可するぜ」
「わお、流石ぁ」
茶化しながら、外に目をやる。
目をやって――呆れた。
「……ねえ、コレが学校なの?」
「ああ」
ヒクッとこめかみが引きつるのが分かる。
「無駄に敷地ありすぎでしょ!何に使うの!?」
「ないよりいいだろうが」
「なくてもいいわぁ!学校を何だと思ってんの!」
これもこの男の仕業か!
大きすぎる校舎はともかく、その敷地。
敷地が広すぎる。
「はあ……」
すぐに地図を頭に叩き込もう、と心にきめた優羅であった。