夕闇イデア

□U
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「くそっ、見失っちまったぜ…」
「個室ばっかりだから部屋に入られたらわかりませんね……」

凛桜が追いつくと、探偵団は車掌に話しかけられていた。

「君達はこの列車は初めてかい?だったら部屋にいた方がいい。室内のスピーカーから今回の推理クイズが発表されるから」
「…………」

すっと目を細める。
どうやら、また何かの事件に巻き込まれたようだ。

「え?まだ事件、何も起きてないの?」
「ああ…、今回はあと1時間後だったかな?」
「コナンくん」

膝を折り、振り返った彼に耳打ちする。

「さっきの、血は偽物だけど拳銃は本物だよ」
「なんで早く言わねぇんだよ!」
「言わせてくれる暇もなかったじゃんよ……」

ダッと元来た廊下を引き返すコナンを追い、光彦と元太も駆け出す。
少女達と一緒に行こうと凛桜は歩美と手を繋いで歩いた。
子供の歩幅は小さい。
全力疾走ならともかく、小走り程度ならば大人は少し早く歩けば事足りる。
凛桜は身長が高い方ではないが、早歩きで対応できた。
そうして数歩踏み出したが、すぐ後ろにいた哀が急に止まった。
それと同時に、凛桜も振り返った。

(…………へえ?)

哀は客室の扉から出てきた、1人の男を凝視している。
凛桜も妙な気配を感じ取り、目を細めた。

「哀ちゃーん?」

隣にいた凛桜が突然立ち止まったので、歩美も哀の様子に気が付いた。
心配そうに声を掛ける彼女の手をしっかりと握り直し、哀の肩にもう片方の手を置いた。

「行こう。立ち止まってても、どうにもならないよ」

ビクッと肩を跳ねさせた哀に笑いかける。

「体調、悪くなったらすぐに言うんだよ?」
「……ええ」

強ばった表情で頷いた彼女の手も引き、少年達の背を追いかけた。
すぐに7号車に到着したが、血の匂いを感じない。

(あれ?)

首を傾げた。
拭き取ったにしても、喰種の鼻を誤魔化しきれるほど少ない量ではなかったはずだ。
B室の扉を開けたコナンも、困惑した表情で室内を見ている。

「レディの部屋に入る時はノックぐらいしなさいよ!」

園子の声である。
扉から顔を覗かせると、中には園子、蘭、世良の少女三人が揃っていた。

「あら、凛桜さん!」
「一緒にお茶しない?」
「いま、この子達と遊んでるからまた今度ね」

誘いがかかったが、笑って首を横に振った。

「それより!ここって7号車だよね?」
「はぁ?」
「ここは8号車!たった今、ボクが遊びに来た所さ!」



(7/9加筆修正)
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