夕闇イデア
□T
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外に出て聞き込みを始めた子供たちだが、少女は見つからなかった。
目立つ外見をしていただけに、すぐに見つかると高を括っていた彼らは1時間後、しょんぼりと肩を落としていた。
車に乗ったのか、それとも。
「見つかんないね……」
「そう遠くに行ってないと思うんだけどな」
諦め半分で、探偵団は図書館に戻ってきた。
もしかするとまだ中にいるかもしれないと思ったのである。
物は試しにベンチに座っている男に少女の外見を伝えると、思わぬ反応が返ってきた。
「ああ、あの子か!俺がナンパしてここに連れてきた!」
「ナンパ?」
「ああ、向こうの大通りで。きょろきょろしてたからついね」
つい、ってなんだと突っ込みたかったが、コナンは我慢した。
「名前は?」
「凛桜、って言ってたよ。名字は聞いてない。歳は18。東の方から来たらしいね」
「他には?」
「うーん、可愛い子だったよ!」
それは聞いていない。
ナンパ男は所詮ナンパ男ということか。
しかし、名前と年齢が分かっただけでも収穫は大きい。
「お兄さんは何してるの?」
「いやあ、暇だし待ってようと思ってね!素っ気なかったけど、会話は続けてくれる子だったから」
「また会えるといいね!」
「あっ、もういいの?君たちもね!」
放っておくといつまでもペラペラ喋っていそうな男との会話を無理矢理切り、少年たちはさっさと図書館へ戻ったのであった。
***
一方、その凛桜は何をしていたかというと。
彼女は今日の寝床を探していた。
裏路地に入り、廃ビルを探す。
誰も寄り付かず、雨風を凌げる場所があればそれで良い。
ちょうど良い場所がないか物色していると、眼鏡をかけた糸目の男とすれ違った。
凛桜はそのまま歩き続け、男は立ち止まった。
一定の間隔で歩く一人の少女の後ろ姿を、横目で見る。
「…………」
――危険な香りがした。
何も起きないと良いが、と男は思案する。
先手を打っておかなければ。彼女を放っておくと取り返しのつかないことになる。
少女の異彩を纏う雰囲気が、そう告げていた。
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