魔界王子 BL小説

□第2話 甘き恥じらい
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「お前ら、
 俺に作らせる気満々だろ」

皮肉な程用意が周到なことに、
調理室には
材料のチョコレートやクリーム、
卵に牛乳と、
スイーツには欠かせないものが
揃っていた。
果物やトッピング材料も。
勿論、器具も完備だ。

文化祭程度の催しなら、
立派な模擬店くらい
軽くできる。

「てへへ。
 作る楽しさに目覚めれば、
 気も晴れてくるかなと思って」

アイザックが
人懐っこい笑みを浮かべる。

「ところで…」

ウィリアムが
『解せない』と言いたげな顔をする。

「どうしてチョコを
 作れと言わんばかりに
 材料が揃っているんだ?」

確かに材料の
7、8割はチョコレートだ。

「だって、もうすぐ
 バレンタインだし。
 丁度良いかなって」

「良くない!
 というか、
 それは女から男に
 渡すものだろう。
 いったい、
 男の俺が誰に渡すんだ!?」

ウィリアムが
アイザックに詰め寄る。

「う〜ん」

少し考える素振りを
見せるアイザック。

そこまで考えなかったのか!?

ウィリアムは内心で盛大にツッコむ。

「例えば…、
 ダンタリオンとか?」

ズトン!

ウィリアムが漫画のような
見事なズッコケを披露する。

「後は、セシル牧師とか?」

ズドズトン!

またまたウィリアムのズッコケ。

「───とりあえず、作るぞ」

そう言うウィリアムの顔は、
火照り、赤面していた。

(難儀なものだな…)

2人のやり取りを見て、
シトリーはそう考える。
お菓子を食べながら。
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