魔界王子 BL小説

□第1話 ヒトのキモチ
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「別に、
 どこも悪くない」

嘘だ。
心が病んでいる。
よくわからないが、
心臓の動悸が早まり、
胸が苦しい。
言葉を発することさえ難しい。

「そうか。
 でも一応、授業は休め。
 今日は俺が付いていてやるから」

そう言ってダンタリオンは
ウィリアムの髪を梳く。

「うん───」

その心地良さに眠気が増し、
ウィリアムは眠ってしまった。




「可愛いな、ウィリアム」

『すやすや』を絵に描いたように
安眠するウィリアム。
そんな彼を見つめるダンタリオン。

もうどのくらい
見つめていただろうか?
何もせず、ただただウィリアムを
見つめ、見守っていた。
何故だろう?
自分のキモチがわからない。

コンコン。
と、唐突に部屋の扉が
ノックされた。

「坊ちゃん。入りますよ」

そう言って姿を現したのは、
トワイニング家の
家令(ハウス・スチュワード)
ケヴィンだ。

「どうしてあなたがここに?」

あからさまに不愉快な
顔をするケヴィン。

「ウィリアムのお守りだ」

「坊ちゃんは 
 具合が悪いのですか?」

「心がな」

ダンタリオンは見抜いていたようだ。

「そうですか。
 あなたは仮にも学生です。
 坊ちゃんは
 私が看ていますから、
 あなたは授業を受けなさい」

「生憎、俺はここを
 離れる気はない」

頑なな両者。
まるで2人の間に
火花が飛び交うように。
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