魔界王子 BL小説

□第3話 白き想い
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2月14日。
数多の男女が浮かれ、
舞い上がり、或いは絶望する。
──所謂、バレンタインデー。

そんな日。
ウィリアムは
憂鬱な気分だった。

女子からチョコレートを
貰えなかった訳ではない。
そもそも、ここは男子校だ。
そんなもの端(はな)から
期待していない。
ウィリアム自身、
そんな事に興味はない。

むしろ、逆だ。
渡したいのに、渡せないのだ。
恥ずかしくて。

(どうやって渡せばいい?
『ほら、やるよ』?
『…受け取って下さい』?
『ありがたく頂いておけ』?)

全くわからない。

頭に浮かぶ、
いくつかの台詞候補を、
次々と粉砕していくウィリアム。


そもそも、
人に贈り物をしたことがあまりない。

(ケヴィンは、
優しいから笑顔で
受け取ってくれるだろう。
……しかし、恥ずかしい)

(ダンタリオンは、
『ついに俺を選んだか!』
とか言いながら
受け取りそう。
……しかし、恥ずかしい)

結局は、
年頃の恥じらいが原因なのだ。

「ウィリアム、居るかい?」

悶々と考え込んでいると、
部屋の扉がノックされた。

(この声は、総代!?
…まさか、チョコを貰いに?)

そんな考えが過(よ)ぎるウィリアム。
しかし、『それはありえん』と
思い直す。

「どうぞ」

短く応える。

「失礼するよ」

その姿は、
制服を着た
ネイサン・キャクストンではなく、
普段着(?)を着たカミオだった。

「何の用ですか?
 俺は誰も選びません!」

反射で叫ぶウィリアム。

そんな彼をクスクスと
笑いながら、カミオは

「君に代理王を
 選べと言いに来たわけではないよ」

と言う。まだ笑いは治まらない。

「チョコ、
 恥ずかしくて渡せないんだろう?」
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