魔界王子 BL小説

□第2話 甘き恥じらい
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「もう体調は良くなったのか?」

ウィリアムが授業を終え、
自室に戻ろうと部屋を
開けた途端、
シトリーが言った。

「…おい」

「ん?」

シトリーは悪意無く
首を傾げる。

「勝手に人の部屋に入るなっ!」

ウィリアムは叫ぶ。

「ったく。ヒトが
 せっかく見舞いに
 来てやったのに。
 なんだその態度は」

「お前こそ
 ヒトの部屋で
 ヒトの菓子を
 食い散らかしておいて
 なんだその態度はっ!」

「まぁまぁ、ウィリアム。落ち着いて」

アイザックが宥めようとする。

「これが落ち着いて
 いられるかっ!
 って、アイザック、お前もか?」

ウィリアムが
更に恐ろしい顔つきになる。

「へ?何のこと?」

アイザックも
悪意無く首を傾げる。

「お前もヒトの
 部屋に勝手に入ったのかっ!」

憤慨するウィリアム。

「待ってよ、ウィリアム」

アイザックが弁明しようとする。

「僕達、ウィリアムが
 調子悪いって
 聞いたから
 お菓子で元気付けようと思って」

涙目で申し開きをするアイザック。

「そうだったのか。
 …それは…済まなかった」

一応は謝罪するウィリアム。

「そうだぞ。
 この私がわざわざ
 スイーツを
 食べに来てやったのだ。感謝しろ」

「お前は
 恩着せがましいんだよ!
 てか、食う係なのかよ!」

ウィリアムのツッコミが
見事に炸裂する。

「いいから、早く“作る”ぞ」

シトリーが待ちきれんと
言わんばかりに急かす。

「そうだね。
 ウィリアム、早く“作ろ”!」

そんなウィリアムの
面持ちは神妙だ。

「…お前ら、
 俺に食べさせるつもり
 じゃなくて、
 作らせるつもりだったのか?」

「うん」「ああ」

「…嵌められたか」

ウィリアムは消沈する。

菓子など、
食べることは多くても
作ったことなどない。
ケヴィンなら
絶品のスイーツを
作ることなど容易いが。
ましてや、
アイザックやシトリーなど
アテにならない。

しかし、
せっかくの善意(?)を
無碍には出来ず、
ウィリアムは渋々
スクールの調理室へと向かう。
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