災い転じて、恋となる。

□第6章 宣言の休日
1ページ/2ページ

「翔瑠…、その…」

声を掛けた相手は、
小説を読んでいるらしかった。

「……何?」

藍色。
この声を色で表現すると、
そんな感じだ。

綺麗だが、物悲しい。

「ごめん!」

深く、折り目正しい、
教科書通りのお辞儀をした。

「それは、俺とは
 付き合えないという宣言か?」

その視線は床に注がれている。

「違う、お前を 
 傷つけてしまった事に対する謝罪だ」

「………」

翔瑠はぎゅっと唇を噛む。

「…翔瑠?」

結夜はそっと様子を窺う。

「ちょっと外に出てくる」

読んでいたであろう
本に栞を挟み、
ローテーブルの上に物音立てずに置く。

「待って、俺も行く」

「………勝手にすれば?」

「…やっぱ、気まずいかな?」

「こんな寒いのに
 パーカー一枚でどこ行くつもり?」

そう言って、
クローゼットから
薄手のコートを取り出す。

今日は9月にも関わらず、
平均気温が6℃を下回る。

「ありがとう」

「干そうと思っただけだし…」

二人で一緒に外へ出る。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ