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波に乗って、歌が聞こえてくる。

とても聞き慣れたリズム、メロディ。

子供の頃から何度も聴いてきた。

小さく口ずさんでみる。

おふねひきの──。

「何、してるの」

後ろから突然声をかけられて振り向けば、黒い髪と瞳の男の子が立っている。

「歌ってるの。おふねひきの歌だよ」

陸の子だ。

「いかないの?あっち」

男の子が指すのは港の辺り。

何を示すのかはなんとなくわかった。

「おかあさんがね、あんまりいかないほうがいいって」

「ふーん。海の人?」

「うん。前はね」

「今もだよ」

そう言いながら、男の子は手を伸ばしてきて、私の頬に……





朝日が眩しい……?

「わああああ遅刻っ!?」

慌てて飛び起きて時計を見ると、いつもの起床の10分前。

なんだ、びっくりした……。

焦って大声を出してしまったことを今更ながら後悔する。

よく考えれば、家の住人全員が寝坊でもしない限り起こしてもらえないなんてことは多分ない。

一応私の出発時間は知ってもらっているんだし。

いつもよりゆっくり着替えて、今日は私の当番ではなかった朝食を手早く済ませて家を出た。
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