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あかりが陸の男と交際していることは、すぐに海村の大人へ知れてしまった。
そして、あかりは父であり宮司でもある先島灯とうろこさまに諭された。
光はその様子を見てあかりの交際相手の男を悪いとし、波路中跡の教室で、相手を殴る計画を立てた。
そして、まなか達は――。
「ねえ、まなか……。紡くんのこと、好きなの?」
「ええっ!? ……そ、そんな……なにそれちぃちゃん!」
ちさきの唐突な質問に、動揺するまなか。
ちさきは、まなかをじっとみつめる。
やがて、言い逃れることを諦めたまなかは、鉄琴に向かう。
「よく、わからない……」
「じゃ、決行は明日な」
光と要が、作戦会議を終えてまなか達のいる教室の前を通りかかった時、鉄琴の音と共にまなかの声が漏れ聞こえてきた。
「でも、好きになったら、お付き合いしたいって思うのかな」
鉄琴を叩きながら、ちさきに背を向けたまままなかは呟くように話す。
「お付き合いしたら、その、……あかりさんみたいに…………キスとか…………」
まなかの鉄琴が速くなる。
そして、一瞬の硬直の後、はっと振り向く。
「えっちだと思った!?」
ちさきは緩く首を振る。
「ううん。全然」
しかし、その後、真剣な表情でまなかの顔を見た。
「でもまなか。気づいてる……よね。柚奈と紡くんのこと」
その言葉に、まなかは息を呑む。
「……紡くんが、柚奈と特別仲良さそうだって」
敢えてちさきは遠回しにせず直接に言った。
まなかはぎゅっと手に持つばちを強く握りしめる。
「…………でも、……でも!まだちゃんとは聞いてないし、ただの友達かもしれないよ……!」
泣き出しそうなまなかを、ちさきはしばらくみつめ、そして優しく微笑んだ。
「……そうね。まだわからないもんね」
まなかは小さく、そうだよ、と呟く。
それは、自分に言い聞かせているようだった。
「光……」
教室の外でそれを聞いていた要が、同じく突っ立っている光を気遣い、声をかけようとしたが、それより早く光は教室へ入っていった。
「帰るぞー、まなか、ちさき」
「ひぃくん!意外と早かったね……!」
光は要の案外に平然と、2人を呼んで帰路へとついた。