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次の日。
私も今日からみんなと一緒におじょしさまを作るんだ。
朝は紡は漁の手伝いで遅くなるから、私は一人で登校した。
いつもより少し早めだ。
確か今日から始めると言っていたからまだ何もないかもしれないけれど、初めてのことだから少し気合いが入ってしまっているのかな。
木工室に入ると、もちろんのこと誰もいなかった。
これから使うためのものらしい道具類が置いてある。
少し散らかっていて、色んなものが落ちている。
「そういえば、今年はおふねひき……」
私が小さく声を漏らすと同時に、後ろで戸が開かれる音がした。
「よー、結構早いんだな。何してんだ?」
振り返ると、光くんが立っていて、後ろにはまなかちゃん、ちさきちゃん、要くんがいた。
「おはよう!」
「おはよー」
「おはよう」
みんなと朝の挨拶を交わしてから、とりあえず光くんの方を向く。
「おじょしさま作り、頑張ろうね!」
「別に」
光くんはすごく不服そうに答えた。
「えっ?」
頑張ろうね、という言葉に対しての別にという返答は、どういう意味なのだろう。
「光だって立候補したくせに」
私の混乱を察知したように、要くんが光くんに意味ありげに言った。
「うっせーぞ要!」
「へーぇ……。なんか、よくわからないけど光くんはおじょしさま作り、やりたいわけじゃないんだ?」
ちょっと悪戯心を起こして、煽るようにに聞いてみる。
すると、意外にも光くんは不満そうにちょっと目を反らした。
……あれ?やっぱまずかったかな……。
「別に、呼び捨てでいいし」
ボソッと呟くように言った言葉は、私の思いにもかけなかった内容で、
「…………えっ?」
聞こえていたくせに聞き返してしまった。
「だから!」
苛立ったように繰り返そうとするのを慌てて止める。
「ああああの!いや、聞こえてたんだけど!うん、聞こえてたよ!」
「聞こえてたんならなー……」
「うあっわかってるよ、ごめんって」
私達のやりとりを、他の3人は面白そうに眺めている。
「えっと、じゃあ私、呼び捨てにしていいの……?」
「何回言わせるんだよ……」
性懲りもなくまた聞き返してしまった私に、呆れたように光くん、光が言った。
同意するように他のみんなも頷く。
光。まなか。ちさき。要。
突然の呼び捨てなんて急には難しそうだけど、それもまた、私にとっては嬉しいことでしかなかった。