天の星
□シンオン
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「なぁ、少し離れないか?」
「…嫌」
「読みづらいんだけど」
「あとで読めばいい」
「今いい所でさ」
「なら読んでていいよ」
「はぁ…隣とか他にあるだろ」
(コイツ、一度言ったら聞かないからな)
少し前─
「あ〜、サッパリした」
今日は休日で、日課のトレーニングを終えシャワーを浴び清々しい気分でいた。
さて何をしようかと考え、読みかけの本があったので手に取る。
夏のクソ暑い気温も和らぎ気分よくページを進めているところにコイツが部屋を訪ねてきた。
別にそれ自体に何の問題もないし一緒にいるのは嫌じゃない。
むしろ来てくれるのは正直なところ嬉しく思う。
(本人に言ってやるつもりはないけどな)
じゃあ何が問題かって─座っている位置だ。
ベッドに寄りかかり足を伸ばして本を読んでいたところに、両足の間に座って寄りかかってきた。
暑いとか嫌だとか思わないし、単に珍しいと思っていたが徐々に本に集中できなくなってきた。
身長差的に夕歩はちょうど胸に納まる。
つまり身体の柔らかさとか髪の香りに意識が向いてしまっていた。
(色気…じゃないけどアてられるんだよな)
「玲?」
「ん?どうした」
「迷惑?」
「今更だな、おい」
思わず苦笑する。
頑固なくせに最後には私を気遣ってくれる。
そんな些細なことでも夕歩に対する愛おしさがこみ上げるのが分かる。
(好きなんだよな〜、コイツが)
本を読むのをやめ、栞を挟んで脇に置いておく。
「迷惑なんてねぇよ」
「ん、玲ありがとう」
さっきまでは遠慮してたのか、そう言ってから身体をあずけてきた。