天の星
□ケンカ
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「ねぇ、順。順は私のこと好き?」
夕飯後、私の部屋に来た夕歩は正面に座るなり単刀直入に聞いてきた。
ちなみに綾那は元嫁もとい染谷に連れられて不在だ。
「そんなん決まってるじゃん。なに?急に好きって言わせたくなっちゃった?姫の誘い受けってやつ?なんかこう、グッとくるものがあるね〜」
「真面目な話だから、ふざけないで」
「…夕歩?」
「私のこと好き?」
「もちろん好きです」
冗談とかの雰囲気ではないようなので真面目に答える。
「嘘」
しかし一蹴された。
「いやいや、本気だって。なんでそうなるの!? 」
「いつもいつも私に気を使ってる…本当は好きでも何でもないんじゃない?」
「はあ?何でそうなるの?」
気持ちを否定されて口調が強くなる。
でも夕歩を好きな気持ちを夕歩自身に否定されるなんて思いもしなかった。
「でも気を使ってるのは事実でしょ?」
「そりゃそうでしょ、好きな相手なんだから」
「でも前は手を繋いでもすぐに離したりしなかったよね?私に触れられたくないんじゃない?」
「そんなわけ無いって」
手を離すまでの時間なんてその時々で変わるもんでしょう?
「なんで信じてくれないの?私は夕歩が好き、大好きなんだって」
「だったら…」
少し言うのを躊躇しているのか俯く夕歩。
意を決してあげた顔には目に涙を浮かべていた。
「だったら…なんでもっと触れてくれないの?キスだって告白の時だけだった…順は無理して私のことを好きって言ってるからじゃないの?」
夕歩の気持ちの吐露と共に涙がゆっくりと頬を伝う。
初めてかも知れない、ここまで感情的な夕歩を見るのは。
でも…
(違う、そんな顔させたいんじゃないっ)
そう思った瞬間に無意識に手が伸び、夕歩を抱き寄せていた。
「ごめん、夕歩。不安にさせて…でも信じて?私は本当に夕歩が好きで誰よりも愛してるって」
「だったら…どうして」
私の腕の中で涙声の夕歩が問う。
壊れ物を扱うように抱き締めながら私は絞り出すように答える。
「好きだから、怖くなっちゃった…初めて抱き締めてキスした時、壊れそうだなって」
それ以前には冗談で夕歩に抱きついたりしていたが、気持ちを伝えてからは怖くなってしまった。
「…バカ順、壊れるわけ無いのに。それに順にだったら壊されてもいい」
なんて、怖いけど嬉しいことを言ってくれちゃうんだから…うちの姫様は
「そんなこと言わないでよ夕歩。でも姫様の許しが出たってことで、嫌と言われようがイチャイチャさせて頂きます」
「順は私の嫌がることはしないよ」
「あはは〜、その通りですわ」
「だからもう少しこのままでいいよ」
「はいはい、仰せのままに」