天の星

□好きだから
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一緒に寝るといっても行為に及ぶかというとそうでもない。
次の日の午前に講義があったりする時は今みたいに隣り合って横になるだけで肌を重ねないと2人の間で決めていた。
もちろん提案したのは私だ。お互いのために区切りは必要だと思ったから…。

私の講義がほとんと午前中だから始めの頃は随分と文句を言っていた順も納得してか諦めてか大人しくなってくれた。
それなのに─

(私が今その決め事を後悔してるなんてね…)

分かりやすい形で近くにいることを確かめたいなんて、我ながらずるいと思う。


気付かれないよう小さく溜め息を吐く。
1つのベッドで一緒に寝るのにはまだ慣れなくて、気恥ずかしさから順の方に背中を向けてしまう。

「…染谷、起きてる?」

疲れていたみたいだからもう眠っただろうと思っていたが違ったようだ。

「ええ…貴方、眠かったんじゃないの?」

「それが考え事してたら目が覚めちゃったんです」

「そう」

背後で身動きするのが分かった。
寝返りでもしたのかと思った時、お腹のあたりに手を回され背中に馴染んだ体温が伝わる。

「順?」

「あー…ちょっとこうしててもいい?」

「別に構わないけど…」

「ありがとね」

そう言ったきり会話が途切れた。


どことなく気まずいその沈黙を破ったのは私ではなく順だった。
順は長く息を吐くと腕に少し力を込めて言った。

「私さ、怖いんだよね…染谷は私と違ってどんどん前に進んでくから、いつか置いていかれるんじゃないかって。あんたの横…違う、隣にいるにはどーしたらいいんだろうって考えるけど分からなくてさ」

はっと息を飲む。

─それは私が順に対して思っていることと同じだったから


私が口を開かないのを気にした風もなく話を続ける。

「距離…っていうのかな、前まで意識してなかったことを意識し始めたら身動きがとれなくなった感じ。こんな事言ってるから染谷みたいに大人になれないんだろーけどね」

見なくても分かる、泣きそうな顔をして笑ってるんだという事が。

「…そんな事無いわよ、だって」

囁くような声量でなんとか言葉を紡ぎ体を反転させる。

「だって…同じ事を考えてるもの」

順の顔を見ながら言う。

「染谷…?」

「貴方が1人で大人になって私だけ取り残されてるって…でもそんなこと言葉に出せなくて、そんな自分が嫌になってっ」

今までため込んでたものが堰を切ったように溢れ出る。
視界がぼやけて涙が出てると気付くがそんなのに構ってられない。

「…言葉に出来る貴方の方がよほど大人よ」

零れた涙を順の指がすくってその手は頬におかれる。

「染谷の本心聞いたの初めてかもね。あんま言ってくれないし、もうちょいぶつかるのもアリだね」

「ぶつかるって…」

「我慢しないで思ったこと言い合うの。難しく考えないでさ」
そういって軽く唇を重ねてきた。

「今日はこれで我慢するけどね」

「そうね」

応えて今度は私から唇を重ねる。
予想外だったのか間抜けた表情の順を見たらそれまで悩んでたのが嘘みたいに心が軽くなった。


好きでいるだけじゃなくて、その好きを互いに伝えあう…ううん、私から貴方に好きを伝えるわ。
それはもう嫌という程に、ね。
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