天の星

□弱点は
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紅愛から指定された時間の少し前に紗枝を部屋に呼んだ。

「玲からの誘いなんて珍しいわね」

「お前から誘われたことだってほとんどないだろが」

「んー、部屋には誘ったりしないけどベッドの上ではいつも誘ってるわよ?」

「………分かったから口閉じろ」

「それでいきなりどうしたの?」

「紅愛に脅された」

「紅愛もやるわね」

「お前があいつに写真をやるからだろ」

「あーあれね、何て言うか必要に迫られて?」

「どうでもいいけどネガ含めて全て燃やせ」

「えー勿体ない」

なにを言っても柳に風だと諦めた時タイミングよくドアの外から声がした。

「開けてくれる?手がふさがってるの」

紅愛の声がして立ち上がろうとすると紗枝がすでにドアを開けていた。

「はい、飲みましょうか」

「おい、これはなんだ」

「玲ってば頭打った?見た目通りお酒でしょ?」

「紗枝はちょっと黙ってくれ…んでこれはなんだ紅愛」

「見た目通りお酒ね。ビールから酎ハイ、日本酒といろいろあるわよ」

「だから何故そんなものを持ってきた?」

「弱点はダメでも醜態くらいは晒すかなって」

「………」

紗枝に聞こえないくらいの声でそう言う紅愛に言葉が出ない。

「さて、飲もっか」

くだらない理由と紗枝の機嫌のいい音頭で結局飲むことになってしまった。



3人の中で一番飲んでるのにあまり変わらない紗枝に酎ハイ一本でダウンした紅愛。
かくゆう自分も少しアルコールがまわってきているようだ。

「気持ち悪いから部屋に戻るわ…」

始めた張本人が席を立つ。
当初の目的はどうしたと問いたくなったがあの顔色は本気でヤバそうだった。

「あら紅愛帰っちゃったの?」

「お前は蟒蛇か」

「まあ2人で続けましょうか」

「まだ飲むのかよ」

「もちろん。付き合ってね」

そういって注がれた酒をやけくそ気味に流し込む。

「なっ…」

視界が揺れて身体が熱くなる。

「大丈夫?玲」

「さ、え…お前なに飲ませた」

「んー?ウォッカ」

「………」

「度数は96ってあるわね」

「殺す気か?」

「冗談よ、ただのウイスキーで度数も50ないから」

「…気持ち悪りぃ」

「玲弱いわね〜、はい水」

コップに入れられた水を受け取ろうとしたが距離感が掴めてないのか落としてしまった。

「自力で水、飲めそうもないわね」


そう言って笑顔を向けてくる紗枝に身体が動いてくれれば兎に角距離を取りたいと思った。
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