天の星

□大人って
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“大人ってどんな人をいうのだろうか”
成人式で偉い人の話を聞き流しながら何となく頭に浮かぶ

少し前までは早く大人になりたくて(あいつを守れるだけの力が欲しくて)、焦りを感じていた
だが紆余曲折はあったもののお互いの家のゴタゴタも片付き、今は一緒に暮らしながら大学に通っている
あの頃の焦りはもう無い



隣に目を向けると長い話を真面目に聞いている“風”に見える紗枝がいる
いつまで一緒にいられるか分からなかった頃と比べ、今は隣にいるというだけで穏やかな気持ちになる

今日は振袖を身に纏い、普段とは違った魅力を感じる
私はというと無難?にスーツといった出で立ちだ
紗枝に振袖を着せられそうになったが何とか事なきを得た

ずっと見ていたせいか、視線に気付いた紗枝がこちらを向き首をかしげる
何でもないと手振りで伝え、前を向く

(それにしても…話長過ぎじゃねーか)




記念撮影を終えて式は終了となった
成人式なんて話を除けば同窓会のようなもので、周りにはちらほら知った顔が見られる

「お久しぶりです、神門さんに祈さん。ひつぎさんが会いたがってましたよ」

「久しぶりね、神門さん、祈さん」

「玲来てたのね。紗枝、久しぶり」

「お、玲に紗枝!久しぶりだな〜」

「お嬢…じゃなかった、久々だな紗枝」

「あ…あ、玲様お久しぶりですっ。このような場所でご尊顔を拝見することができるなんて…」

…あまり関わったことがないのも一部いるが、懐かしいことに変わりはない
それぞれの話に花を咲かせる


─そしていつの間にか一度解散してから同窓会をやる流れになっていた




とりあえず家に戻り着替える
着なれないものを着ていたせいか肩がこった

「そんな仲良くもやってなかったのに、わざわざ集まって話すこともないだろ」

「その場の流れってことよ。振り返ってみたら良い思い出で、それを共有できるメンバーってところね」

「そういうもんかね〜」

「まぁ、後輩に慕われてた玲には話の合う同級生は少ないかしら」

「いないって言わないのは優しさのつもりかよ」

「あら、他意はないわよ?」

表情は変えず声が笑っているのだから達が悪い
口で勝てないのは百も承知(他に勝てるものも浮かばない)なので、出掛ける準備を進めることにした
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