二次小説
□song for you
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大好きな人の大切な日に私は何が出来るんだろう…
最初の印象は最悪だった。
なんて傲慢で融通が利かないんだろうって、そう思った。
でもそうじゃなかった。
本当のあの人は直向きで一生懸命で綺麗で優しくて温かくて…とても繊細な人だった。
そう気付いてから、ううん気付く前からあの人のことを目で追っていた。
その事を自覚したのが気付いてからだった。
自分でも分からない気持ちが大きくなっていって少し怖かった。
その些細な様子の変化に気付いてくれたのもあの人だった。
相談に乗ると言ってくれた。
嬉しいと同時にさらに怖くなった。
自分でも掴みきれていない“想い”を伝えることが…
でも私の気持ちなんてお見通しだったみたいで、それを悔しいなんて思わない。
ただただ嬉しかった、受け入れてもらえたことが何よりも
─だから今日は私にしかできないことをしたいとそう思った
(ふぅ…また何か1人で悶々と考えてるのかしら)
今は昼休みで目の前にいる下級生と一緒に昼食をとっていたところだ。
箸の進みが遅いと思ったら今し方ついに手が止まった。
「真姫?どうかしたの?」
「えっ…な、何でもないわよっ」
何でもないのは分かったとして表情を見る限り深刻なものでは無さそうだと判断し、そうとだけ応えて食事を続けた。
食事を済ませたら休み時間が終わるまで2人で他愛のない話をしたり、時には何も話さずただ一緒にいたりする。
放課後は顔を合わせられるとはいえ練習があるから、こうはいかない。
『ごちそうさまでした』
お弁当を片付けて今日はどうするのか聞く…否、聞こうとした。
「絵里、時間まだ大丈夫よね」
「え、ええ…もちろんよ」
いつもとは異なり真姫の方から声をかけてきた。
少し驚いたが何だか新鮮で思わずドキッとしてしまった。
珍しくしかも校内で真姫の方から手を繋いできて(正確には手を引いてるんだけど)向かった先は音楽室だった。
「絵里ここに座って」
ピアノの音がよく聞こえて、かつ弾き手が見える位置に椅子が用意された。
「ピアノを聴かせてくれるの?」
「ええ、そう。今日のための詩‥絵里のための」
「え…?」
〜〜♪〜〜
聞き慣れた綺麗な歌声…でもいつもとは違っていた。
私へ、私にだけ向けられた音と声と‥真姫の想い。
曲が終わった後も声を出せなかった。
その静寂を壊すでもなく真姫が話し始めた。
「誕生日おめでとう、絵里」
「も、もう‥吃驚させないでよ」
「私にしか出来ないことをしたかったの…大切な人の大切な日だから」
「真姫…」
「それともう1つ、はい」
差し出されたのは綺麗に包装された箱だった。
「これは?」
「開けてみて?」
丁寧に包装紙を取り箱を開けると
「真姫これ‥とっても綺麗‥」
そこには水色を基調に音符をモチーフにしたネックレスがあった。
「お店で見かけたときにこれしかないって思ったの。…気に入ってもらえた?」
心配そうな顔で尋ねてくる大好きな人を笑顔にしたくて、今自分が感じてる喜びを精一杯笑顔にして頷いて見せた。