天の星
□弱点は
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「ったく昼休みにも呼び出しとはな」
大した業務もないのに呼び出したり、自分の仕事を押し付けたりと毎度用件は違うがサボるとひつぎがうるさいので重い足をなんとか動かしている。
部屋に入ると見慣れた顔が4つ。
黙々と書類を片付ける静久、飯後にもかかわらずお菓子を食ってるみのり、今まで手ではなく口を動かしてたと思われる紗枝と紅愛。
「ひつぎが居ないなら来なくてもよかったな」
「サボるなんてダメよ、玲」
「…今まで口動かしてた奴に言われたくねぇぞ」
「あら、誰の事かしら。私はこれ提出してくるからあとはよろしくね」
「おいっ…多すぎだろこれ」
文句を言う前に逃げられた。
机に乗っている書類の山を見て部屋を出たくなったが片付けないわけにはいかないので渋々席につく。
「紅愛、お前も何とか言えよ」
「あの女に文句が言えるほど命知らずじゃないわ。何されるか分かったもんじゃないんだし」
「それは言い過ぎだろ…否定はしないが」
「ほらね。まあ、兎に角やっちゃいましょう」
「へいへい」
しばらく作業に集中していると紅愛が唐突に口を開いた。
「…弱点とかないのかしら」
「はぁ?」
「紗枝の弱点よ。人の弱みは握っても自分の弱みはまず見せないでしょ?」
「まあ、そうだな」
玲一は弱点になるのだろうかと一瞬考えたがあれは単に嫌悪だし違うと結論付ける。
「ってわけで弱点知らない?」
「知らねぇな」
「恋人の玲でも知らないか…」
「…さらっと関係を付け加える必要あんのか?」
少し考え込む紅愛を余所に手を動かす。
「弱点は無理でも何か…」
ぼそぼそと何か言っているようだが面倒なのでつっこまない。
「ねぇ玲、今夜部屋使わせてもらうわね」
「はぁ?」
なんか企んでる時の顔で言う紅愛に先ほどと同じ返答をしてしまった。
「都合がいいことに明日休みだし、ちゃんと紗枝も呼んでおいてね」
「おい、なに勝手に決めてんだよ」
「これ、欲しくない?」
紅愛が取り出したのは数枚の写真だった。写ってるのは…
「なに人の写真持ってんだよ」
寝顔だったり何故か笑顔だったりと、どう見ても盗撮甚だしいものだった。
「これを焼き増ししてファンクラブに寄贈するとか?」
「お前…やっぱ性格悪りぃな」
「あんたの彼女ほどじゃないわよ」
「…分かったからネガごと寄越せ」
「ネガは紗枝が持ってるわよ」
「…………」
頭が痛くなるのを感じた。
この時何故紅愛がそれを持っているのかなど全く気にもとめなかった。