ソウマカ【魂喰】

□不安に溺れて止まらないで
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彼と彼女を見るのは、本人たちには申し訳ないけど飽きないの。








「ソウルくーん、あれどうすればいいのー?」

別クラスの女の子が、教室に入って彼の隣に座った

さっきあった武器だけの授業の時の子。言うまでもなく、ソウル君に惚れているようで積極的にアプローチをしかけているよう


…ごめんね、それ実は無意味なの


心の中で悪態をついて、そっと彼を見守る。職人である彼女はいないから、少し不機嫌そう


「俺、講習聞いてなかったから知らねーわ。他のに聞けよ」

「あっ!ソウルくーん」


見え見えの嫌悪感を出しながら女の子から離れる彼。隣に座られるのがよほど気に入らなかったらしい


…そうね、ソウル君の隣は彼女の特等席だもんね


武器専門の教室を出た彼に続いて部屋を出る。少し広い廊下を視界に入れたら、右手に壁に凭れる彼が居た


「マカちゃん待ち?」

「…まぁな」

「本当、大好きねー」

「う、うっせ!てか、椿さっきの見てたろ」

あら、真っ赤になって…否定の言葉もないのね

「ふふ、なんだか目に入っちゃって」

あらあら気付かれてたみたい。まぁあれだけ観察してれば当然かな

「ソウル君、ちょっと素っ気なすぎるよね。他の女の子に対して」

「…そうか?」

「私やリズちゃんたちはいい方だけど…面識の少ない子には…ね」

「あーーー、必要ねぇからな」

「やっぱりマカちゃんには紳士かな」

「あ、あんまそういうこと言うなよ!」

「普段相談のってあげてるんだから、ちょっと意地悪してもいいじゃない」


そう、彼の面白いところはここ。

素直に反応して、見え見えの嘘をついて図星を付かれて赤くなって…

…似てるのよねー



「あっ!ソウルー!椿ちゃーん!」


ほら、愛しの彼女がお出ましよ

「武器の方も終わったの?」

「うん。あ、そうだ。マカちゃんブラック☆スター知らない?」

「あー…後ろに居ると思うよー…

騒いでて呼び出しくらったから…」

それは後方の職員室のことを指すのね。全くブラック☆スターは…


「ま、今日はもう帰るだけだし…良いだろ」

「そうね、でも私はここで待つわ」

「え?一緒に帰らないの?」

「うん、これ以上独り占めしたら可哀想だもの」

「?」


彼女は気付いていないけど、隣に居る彼はすごく同様してるのよ

「じゃあ、またね!椿ちゃん」

「うん、明日ねー」

「あ!そうだ、椿」

歩き出したと思った彼は突然足をとめ、振り返る。さすがに彼の行動に疑問を抱いた私は少し首をかしげて「どうしたの?」と問いかけた


「お前もだろ」

「え?」



「お前もあいつのこと大好きだろ!」



顔がぼっと熱くなる。

この人はなんてことをこんな広い廊下で叫ぶのか

口の端がにやけているのがまた腹の立つところ



「あー!そういうことね!ふふっ椿ちゃん頑張ってねー!」

ほら、貴方が言うから彼女までそう言うじゃない

本当、似てるんだから


「マカちゃんもねーー!」


悔しいから、少し大きな声で言ってやる。案の定、彼女は顔を赤くして人差し指を口に当て必死に抵抗してみせた

私の言葉と彼女の行動の意味を察した彼は自分の疑問を彼女にぶつけながら一緒に歩いていく


…もう、早く付き合ってよ


「椿ーーー!」


なんて思っていたら後ろから聞き覚えのある好きな声に呼ばれ、振り返る


「今日も俺様は目立ってきたぜ!」

「ふふ、そう。でも授業はちゃんと受けなきゃダメよ?ブラック☆スター」

おう!、と返事を返すけど、絶対聞いてくれないんだもんね。こればっかりは義務よ


いいじゃない、ソウルくん
貴方は全然愛されてるんだもの



私とは違う決まった結果があるんだから、幸せに思ってね









「もー!早く気づけばいいのになーあの二人」

「ブラック☆スターがそういうの出さな過ぎなんだよ。ある意味憧れるぜ」

「え!?ソウル好きな人いるの!?」

「んー、マカが教えてくれたら教える」

「えー!そんなのズルいってばー!」

お前は知らないんだろうな、こんなにも向けてる君への想いを


貴方は気付かないんだろうな、少し期待してる私のことを

駐車場へ歩く道、歩道側はいつも私。本は私から取らない、荷物だけさりげなく持ってくれる

本を取らない理由は、私が読書したいときいつでも開けるよう


どんだけ私のこと知ってくれてんのよ。

大好きよ、バカ


「ねぇ、ソウル。私の好きな人教えてあげる!」


「え!?…マジ?」


「びっくりしないでね。絶対黙って聞いててよね!」



ちょっとくらい、前を歩いてもいいよね




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不安に溺れて止まらないで





進んでいけば幸福は来るものだから

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