私のヒーロー・番外編

□8.合同合宿の前に。【鳳長太郎】
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*鳳side



「はぁ、やっぱり駄目だ……」


ため息をつきながら、構えていたバイオリンを下ろす。

自宅の防音室で朝から練習していたけど、どうにも気持ちが入らない。

原因は分かってる。

間近に迫った合同合宿のことをずっと考えているから。

というより名無しさんのことを、かな…。


合宿に参加することが決まったとき、名無しさんは他校の人たちにうまく馴染めるかどうかを心配していた。

そのあとは楽しみな気持ちのほうが強くなったと言ってくれてはいたけど、名無しさんはそういうところ繊細だし、やっぱり不安はあるだろうなと思う。

なんとかしてそれを和らげてあげられるといいんだけど、一体何を言ってあげれば、何をしてあげればいいのか…。

あれからずっと考えているけど、なかなか答えが出せない。

下手なことをして余計に意識させるようなことにでもなってしまったら、本末転倒だし。

今の曲も、名無しさんに聴いてほしくて、彼女には内緒で少しずつ練習していた。

名無しさんが好きそうな曲調だから、喜んでくれるかなと思って選んだんだけど…。

今のままじゃ、とてもじゃないけど聴かせられない。

逆に心配されてしまいそうだ。


「はぁ……」


あ、またため息が……。


…あぁ、もう。

俺ってなんでこうなんだろう。

こういうとき、先輩たちならバシッといい方法を思いつくんだろうなぁ。


って、こんなことばっかりウジウジ考えててもしょうがないか…。


…そうだ!

天気もいいし、気分転換に散歩にでも行こう。




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