新しい日常編
□10.宍戸先輩とネックレス。
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鳳くんといくつかのネックレスを見ていると、宍戸先輩が戻ってきた。
「宍戸さん、大丈夫でした?」
「ああ、たいした用じゃなかったぜ」
「そうですか、良かった。
今名無しさんのネックレスを見てたんです。宍戸さんも一緒に見ませんか?」
楽しげに話す鳳くんとは対称的に、宍戸先輩は少し戸惑いがちにうなずいた。
「あ、ああ…」
やっぱりどう見ても楽しくはなさそうで、申し訳なく思ってしまう。
つまらないとは言えないだろうし…。
「あっ、そうだ。
名無しさん、帽子どう?黒いのもいいでしょ?」
『う、うん。自分で思ってたよりよかった』
「でしょ?どんな帽子を被ってるかで似合うアクセサリーも変わりそうで、いろいろ考えると楽しいね!宍戸さんはどれが名無しさんに似合うと思いますか?」
「えっ、ああ、そうだな…」
意識的になのか無意識なのか、鳳くんは自然な流れで宍戸先輩に話を振ってくれた。
先輩はきれいに並んでいるネックレスへと視線を落とす。
あまり興味がないはずなのに、ひとつひとつじっくりと見てくれていて、真面目な宍戸先輩らしいなと思う。
「…あ」
「いいと思うもの、ありました?」
あるネックレスに目を止めた宍戸先輩に鳳くんが声をかけると、先輩はそのネックレスへと手を伸ばした。
…けど、途中でその手を引っ込める。
「?
宍戸さん?」
「ああ、いや、なんつうか…。
そもそも俺の意見なんか参考にならないんじゃねぇか?女子のアクセサリーを選ぶなんて慣れてねぇ…どころか初めてだし…」
だんだん声が小さくなっていく宍戸先輩。
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