弾丸論破

□嘘つきの日
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「兄弟!」
紋土の部屋で勉強をしていた石丸は
突然叫んだ。
「なんだ、いきなり」

今、大和田と石丸は春休みの宿題をしているところだった。
宿題多くて終わらねぇよ。と小さく呟いた大和田の言葉を聞き
石丸が「ならば一緒にやろうではないか!」と切り出したのだ。

石丸は大和田の顔を見て笑いを堪える
なにが面白いのか分からない

「僕は君のことがだいっきらいだぞ」
…言うと思った。

そう。今日は4月1日。
世間で言うエイプリルフールである。

「はいはい俺もだいっきらいだ」
大和田は軽く言葉を返した。
勿論、大好き、という意味を込めて

「ほっほんとかね??」
石丸が不安げな顔で大和田をのぞきこむ
しかし宿題のプリントに目を向けている
大和田はその表情に気がつかない。

「ああ、ほんとだぜ。」
さぁて、石丸はどんな顔をしてるか
確認しようと顔を上げた大和田は
「うぉっ!」
その姿に驚いた

石丸は涙をこぼしながら
ぐずぐずと泣いている
「兄弟っ?!なに泣いてんだ?!」
大和田は
服の袖で石丸の涙を拭いてやる
石丸は涙もろいのもあっていつ泣くのか予想がつかない。

「ぎょっきょうだいは…ぐずっ
僕のことがぁ…きっ嫌いなのかね?」
石丸は上目遣いになりながら大和田に尋ねた。
クソッ可愛い。
こいつ、俺が嘘ついてるって気づいてねぇのか
面白いからもっといじってやろうか

「あぁ、だいっきらい
世界一だいっきらい。」
大和田は石丸に頑張ってつくった
真顔で言った。
口元が緩んでしまいそうだ。
「うぅっ…じゃ、じゃあ今まで僕たちが築いてきた友情はっ」
必死になりながら石丸が言う
勿論本物に決まってんだろうが。
俺にとっては'友情'ではなく'恋愛'として
受け取って欲しいんだけどな

「嘘だ。ぜーんぶぜんぶ」
大和田は石丸の横に座った
石丸の肩がビクッと動く

「嘘だったのだな………僕には、やはり親友など作ることは、できないのだな」
寂しそうな顔をして石丸は目を背けた
「あぁ、親友なんか、できない」

大和田は石丸の体をゆっくりと倒した
「きょっきょうだいっ」
石丸は慌てた。
しかし抵抗はしない
大和田は石丸の頬っぺたに唇を落とした
ふに、石丸の頬っぺは思ったより温かく、柔らかかった。

石丸は硬直した。そのあとに顔がカァッと赤くなる。林檎みたいで面白い。
「なっなななにをするのかねっ兄弟?!
不純だぞしっしかも僕は…」
「あーはいはい今の全部嘘だぜ」
大和田はニヤッと笑って起き上がった

「なっ………もしかしてさっきの言葉もか?!」
「おぅ」
「そっそれにしても、どが過ぎるのではないのかねっ?!」
確かに。やりすぎた…か?
唇にしなかっただけ自分を押さえられたと思うが…

「いいじゃねぇか。兄弟だろ?」
理由になってない理由を押し付ける
「むむ……」
しかし、石丸は兄弟という言葉に弱いのかなにも言い返せない
「でもっしかしっ…!」
「?」
再び石丸の顔が林檎のように赤くなる
何を言い出すのか?

「きょ、兄弟の僕だから許されるのだから。ほほ他の人には…そ、そのようなことは…やめたほうが…いい ぞ?」
おぅぅ…!なんだコイツ!
誘ってんのか?
「おぅ!そうしとくぜ」
大和田はニカッと笑って親指をたてた
「やっ約束だぞ?」
「おぅ!」
そう言って石丸の頭をガシガシ撫でた。
「兄弟、だいっきらいだぜ」
「僕も、兄弟がだいっきらいだ!」

どっちの意味なのかは今の大和田にとってはどうでもよかった。

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